サービスの枠を超えたEC決済基盤の統合に挑戦。今後の成長の根幹を担う「プロダクト基盤部」立ち上げの裏側と展望
ラクスル株式会社 プロダクト基盤部 EM / テクニカルPdM
安尾 友佑
Yusuke Yasuo
大学卒業後、NTTコミュニケーションズに新卒入社。以降、ゲーム業界をはじめ、複数の企業を渡り歩いた後、2023年にRAKSULへ入社。プロダクト基盤部のエンジニアリングマネージャー(EM)を務める。現在はDirectorに就任し、当社の事業拡大を加速させる「決済プラットフォーム」の構築に邁進している。
「世の中を変えるプロダクトに、長く関わり続けたい」BtoBの複数事業を展開していたことが入社の決め手に
——まず、安尾さんのこれまでのキャリアを教えてください。
大学卒業後、新卒でNTTコミュニケーションズに入社し、SIとして官公庁向けの案件に携わっていました。営業担当者と一緒に提案に行って、外注先に見積もりを取ったり、構築のためにデータセンターに立ち会ったり、というPM業務を行っていました。
——それからご自身もエンジニアになりたいと志し、次の環境へ?
そうですね。大学生のころから「世の中を変える、より良くするプロダクトを作りたい」という思いはありました。きっかけは、大学生のときにSNSが流行し、周りの人との関わり方が大きく変わったこと。特にFacebookは学生が立ち上げたものが世の中を大きく変えていたので、すごく夢を感じました。そうして、自分もゼロイチでプロダクトを作り、世の中を変えてみたいと思うようになりました。
とはいえ大学時代の私はプログラミングがすごく得意だったわけではなく、ひとまず大手企業に就職したのですが、次第に自分で手を動かして作りたいという思いが強くなり、エンジニアに転向しました。
——エンジニアになってからは、どのようなお仕事をされていたのですか?
エンジニア転向後はgooブログの運営を担当し、WebやiOSアプリ開発にも携わっていました。その後、当時全盛期だったソーシャルゲームを運営するコロプラ社へ転職。コロプラ時代の上司とともにゲーム会社を立ち上げたり、知人と飲食業界向けのサービスを立ち上げたりと、いくつかの会社でゼロイチを経験したのち、dely社でもサービス立ち上げを経験しました。RAKSULには、2023年に入社しています。
——転職する際に、大切にしていた軸はありますか。
大きく2つあります。1つは、世の中をより良くできるプロダクトに携われること。これまでもその思いを持ってゼロイチでプロダクトを立ち上げてきたわけですが、作ったものを大きくして世の中を変えていくのは非常に難しいと感じました。一定の規模まで大きくなってもサービスクローズになってしまう……というケースも多かったため、次は、世の中を変えるプロダクトに長く関わり続けられる会社に入りたいと考えていました。
また、BtoBかつ複数事業でうまくいっている会社の方が新たなチャレンジの機会が多く、再現性を持って事業を作る力やノウハウがあるのではと考え、複数事業・プロダクトを有する会社を探していました。
2つめの軸は、自分のキャリアを作っていける会社かどうかという点です。私の場合は、技術面でのスペシャリストというわけではなく、これまでのキャリアにおいてもマネジメントの面から事業にレバレッジをかけていきたいと思っていました。
ですが、会社が成長し、人が増えなければマネージャーとして力を注げる範囲も限られてしまいます。自分のキャリアを作るためには、会社が会社として成長し続けることも欠かせないと考えていました。
RAKSULの面接で、ラクスル事業本部のCTOを務める岸野さんと話したときに、RAKSULは企業として年々成長を続けているばかりか、やる気と能力があれば、年齢や社歴に関わらず抜擢があると知りました。会社としてもそのようなカルチャーがあるし、岸野さん自身も、私が思い描いているキャリアを歩んでいる——それが後押しになり、RAKSULへの入社を決めました。
決済プラットフォームを統合する「プロダクト基盤部」
——安尾さんはRAKSULのプロダクト基盤部に所属されていますが、何をしている部署ですか?
プロダクト基盤部とはその名の通り、社内のプロダクトの基盤を構築・運用する部署で、現在は約10個のECから利用される決済プラットフォームを構築しています。
——具体的に、どのような取り組みをしているのでしょうか。
決済プラットフォームの構築は、決済手数料の圧縮と、ユーザー体験の共通化を目指した取り組みです。
RAKSULには、自社開発サービスとM&Aでグループインしたサービスを合わせて現在10個ほどのECがあります。これまでECの裏側にある決済代行業者はそれぞれ違っていたのですが、それだと業者ごとに手数料がかかるばかりか、ボリュームディスカウントも効きません。そこで、決済プラットフォームをひとつにまとめてボリュームディスカウントを効かせ、年間で億単位のコストカットを行っています。
加えて、現在は個々のECごとに使用可能なポイントやクーポンも分かれてしまっている状況です。それらをひとつの決済基盤に統合し、共通のポイントやクーポンが使えるようになれば、クロスセル・アップセルを実現できると考えています。
——たしかにユーザーにとっては、各ECで同じ体験で買い物ができるほうが利便性が高いですよね。しかし、それがなぜアップセルやクロスセルにつながるのでしょうか。
RAKSULの各ECにはそれぞれ特性があり、リピートに強いECもあれば、新規顧客に強いECもあります。たとえば、最近M&Aでグループインしたハンコの総合EC「ハンコヤドットコム」は、同じお客さまが短期間で何度も訪れるケースは稀ですが、開業にともなう印鑑作成をはじめ新規顧客の獲得には強みがあります。「ハンコヤドットコム」でハンコを購入する際に印刷EC「ラクスル」でアカウントを作ってもらうことで、別の機会にチラシやノベルティを作りたいとなったときに「ラクスル」へのアクセスが容易になりますし、ハンコを購入したときにもらったポイントがチラシ印刷やノベルティ制作でも使えれば、「『ラクスル』で買おうかな」と思ってもらいやすくなる。これが、アップセル・クロスセルにつながる理由です。
——これまでにも、複数のシステムを統合されたご経験はあったのですか?
過去に2つのシステムから利用されるID基盤の開発にエンジニアとして関わった経験はありましたが、これほど多くのシステムが関わる基盤の開発は初めてです。このプロジェクトのお話をもらったときには、正直「自分にできるのか」という不安もありました。ですが、そんなに大きな仕事を任せてもらえるのだと思うと嬉しかったですし、チャレンジングな課題に対してはとても前向きな気持ちで、ラッキーだと感じましたね。
——初めてのご経験で既に大変な点も多いのではと想像しています。どのように乗り越えていきましたか。
テクニカルPdM(テクニカルプロダクトマネージャー)として、エンジニアとして、それぞれに大きなチャレンジがあったと思っています。
決済基盤は、社内の多くの人に話を聞かなければ動かせません。エンドユーザーは当然RAKSULのサービスを使ってくれるお客さまですが、その手前には、各ECのカスタマーサポート(CS)、経理担当などさまざまな人が関わっています。各ECの仕様、特に決済周辺を理解しなければ進められないため、入社直後から各ECのテクニカルPdMやCS、さらに、プラットフォーム統合後も適切に経理処理が回るよう経理や法務にも話を聞いて回りました。それがテクニカルPdMとしてのチャレンジです。
また、先ほどお話しした通り、これほど多くのものが連携している基盤の開発は初めてだったため、設計の仕方に悩む場面もありました。そこで、社内のシニアエンジニアに協力いただき、毎週レビューをもらう時間を作りました。「こういうものを作りたいんです」という理想の状態から、課題の洗い出し、洗い出した課題に対しての具体的な施策までを毎週話し、2~3か月かけて設計を決めていきました。こちらはエンジニアとしての大きなチャレンジだったように思います。
——安尾さんは、2023年8月にEMとして入社後、半年でDirectorになられています。もともとそのようなキャリアを思い描いていたのでしょうか?
そうですね。これまでの会社でもEMは経験してきていたので、さらにその先に経験を積みたいと思っていました。自分のWillとRAKSULの人材ニーズが上手くマッチしたのだと考えています。
——そのポジションになるために取り組んでいたことはありますか?
もっとも意識していたのは、上長との1on1の場などで「期待値とズレていませんか?」と都度確認することでした。具体的には、会社としてのオーダーと今の自分の取り組みは合っているのか。今のグレードに対して何が不足しているのか。加えて、2つ上のグレードを目指すとしたときに足りていな箇所はどこか、課題は何かを積極的に聞くようにしていました。
成果を出すために、責任をもってチームをリードするという点にも力を入れていました。プロダクト基盤部は2023年の8月、私が入社するタイミングで出来上がった組織だったため、入社時にはチーム風土やルールもありません。それらをチームメンバーと作り、浸透させながら決済プラットフォームの構築も推進しています。
思い切ったチャレンジができるのがRAKSULの良さ
——プロダクト基盤部の仕事の面白さや、やりがいを教えてください。
事業的なインパクトがある点が面白さのひとつです。決済プラットフォームの統合によって、億単位での決済手数料の削減ができます。それだけでも十分なインパクトですが、今後内製での立ち上げやM&Aで事業やサービスが増え、ECが増えれば増えるほど、そのインパクトは大きくなっていきます。
さらに、既存のECに関しても、売上拡大にともなって決済手数料の削減額は大きくなり、いわば“複利が利いていく”状態。今作ったものが長期にわたって役立つと実感できるだろうと思っています。
また、削減したお金を再投資し、ユーザーがもっと使いたくなるプロダクトを作っていける。「コスト削減」というと守りの施策のように聞こえますが、1億円のコスト削減をするのは1億円の利益を生んでいるのと同じととらえることもできます。そのうえで以降の攻め、つまり、決済を起点としたRAKSULの成長を思い描きながら携われる点に、大きなやりがいを感じています。
——入社して約1年経ちますが、安尾さんから見たRAKSULの良さは何でしょうか?
RAKSULは、良い意味で“まるっと任せてもらえる会社”です。任せてもらえるからこそ、思い切ったチャレンジができる。渡される裁量が大きいことが、特に良いところだと思います。
一方、困ったときには一緒に知恵を絞って協力してくれる環境があります。今回の基盤開発の際に、私がシニアマネージャー、各ECのテクニカルPdMの皆さんに助けてもらったように、Biz(ビジネス職)側にも、Tech(テック職)側にも、優秀で協力的な人がたくさんいる。チャレンジングなフィールドと、サポートのある安心感、両取りできる環境だと思っています。
エンジニアにフォーカスすると、高速でプロダクトを作るエンジニア特化の道も、私のようにマネジメントで価値を出す道もあります。自分の目指すキャリアに合った成長環境を選べる点も気に入っています。
——安尾さんの、今後の目標を教えてください。
今後は、決済以外の領域でも価値を出していきたいと思っています。RAKSULグループ全体に目を向けながら、どんなビジョンを持ち、どんな順番でやるのかの理解を深め、貢献できる範囲を広げていきたいですね。
チームとしては、メンバーに成長してもらい、彼らのキャリアプランに合わせた抜擢を積極的に行っていきたいと思っています。そして、組織的に抱えるより大きな課題の解決に向け、非連続的な取り組みの提案や推進を行っていきたいと思っています。
——最後に、RAKSULへの入社を検討してくださっている方々に向けて、メッセージをお願いします。
RAKSULは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を企業ビジョンに掲げ、既存の伝統的な産業や仕組みを変えていっています。かつての私のように「世の中をより良くしたい」と考えている人と、一緒に働きたいですね。
事業・技術・組織、あらゆるチャレンジングな機会があるRAKSULで、自分のやりたいことにどんどんチャレンジしていってください!