ラクスルが乗り越えてきた試練
■乗り越えてきた「3つの壁」とは?
この10年間、事業が成長し仲間が増えていく中で、嬉しいことがたくさんあった半面、苦しいこともたくさんありました。今回はラクスルとして壁を乗り越えてきた「3つの壁」を松本さんよりご紹介します。
乗り越えた壁 ①事業が立ち上がらない
2012年、印刷ECがβ版から本番に変わったら一気に売れる見込みだったがそうはならず、売上実績が計画の1/8で伸び悩んでしまいました。出資をしてくれたヤフー株式会社の小澤取締役(現副社長)に下の資料とともに謝罪に行ったのが2013年頃です。
ただ、ビジョンへの共感で助けてもらえたと思うことがいくつもあって、当時特に助けていただいたと印象に残っているのは、株式会社 帆風(Vanfu)の犬飼社長でした。現在はもう取引が無くなってしまったのですが、これまでのネット印刷ではなく折込チラシやポスティングといった新しいコンセプト、そして印刷機を持たなくても売ることができる新しい印刷業界を作っていきたいというビジョンを話すことによって、「お前、いい奴だな!」とよい条件で取引を始めてもらうことができ、それが当時のラクスル の大きな起爆剤になりました。
ビジョンへの共感で壁を突破できたこれらの経験を振り返ると、ビジョンを持つことの意味や重要性を感じます。折込チラシやポスティング、シェアリングのモデルなど、そういったビジョンへの共感で助けてもらったのは非常に大きかったです。
乗り越えた壁 ②組織が崩壊
2014年のラクスルの離職率は42.4%。この離職率を上回るスタートアップは聞いたことがないというくらい驚異的な数字です。それには様々な理由がありました。もちろん私のマネジメントスタイルも良くなかったなと、、当時のことはとても反省しています。そうやって自分自身を変えていくことと、ワンマンの会社ではなくチームで経営し、組織で運営していくことを目指して、会社の中から強いリーダーシップを持てるよう、このタイミングで取締役のメンバーをはじめ多くのメンバーに入ってもらいました。一人のカリスマが引っ張る会社ではなく、組織で、チームで世界を変えていく会社をつくらないとビジョンは実現できないと思ったので、ビジョンへの共感で組織を作っていく会社にしていこう、と。
実は、今では想像できないと思いますが、当時は面談した3人に1人は採用していました。今だと採用されるのは100人にひとりくらいですよね。採用においてもビジョンへの共感とスキルの高さを併せ持つ人を採用して、一緒に働いていくという方向に舵を切りました。最高の仲間と働く環境を作っていこうという考え方に変え、誰に同じ船に乗ってもらうかを徹底的にこだわるようにしました。現在、皆さんにも通常業務で忙しい中、時間を割いて採用に協力してもらっていることにはとても感謝しています。採用重視が崩れると会社は一気に崩れます。そして今は「最高の仲間と働く」ことができているからこそ、ラクスルはここまで成長できたと思っているし、今後ももっと世の中にインパクトを出していけると思っています。
乗り越えた壁 ③バケツの穴
組織崩壊が収まり、なんとか良い組織はでき始め、良いパートナーにも恵まれ、大きな資金も調達できて、マーケティングにも投資をして、売上はどんどん伸びていくという状態だった2016年。しかし、一方で印刷事業のリピート率は2015年から年々低下していました。売上は急成長しているのに、お客様の離反が続く。会社が急成長する中、リピート率の低下で会社がなかなか良い雰囲気にならないことに、当時はとても焦っていました。そこで、これら4つのことを変えました。
まず、ABテストをやめて、お客様の課題が何かを探るため、お客様を観察しヒアリングにいくようにしました。成果は1ヶ月で出すものではなく、半年〜一年かけて大きく成果を変えていく、という方針に変えました。そして、発注をする前から商品を受け取った後に至るまで、WEB上の表面的なインターフェースだけではなく、システム全体やバリューチェーン全体を見直すことで、サービス全体で得る体験を変えていこうとしました。それまではとにかくスピード重視でしたがそれをやめ、本質的な顧客価値を作っていくことに向けた会社の動き方、特に時間軸を長く置くことにシフトしました。その結果として、リピート率がまた戻り始めました。これがプロジェクトを生むきっかけになりました。
このように、創業時から現在に至るまで、決して順風満帆だったわけではありません。大きな壁にぶつかりながらも、ビジョンを持ち続け、仕組みを変えてきたからこそ今のラクスルに繋がっているのです。