
【RSMU#2イベントレポート】エンタープライズセールス最前線──LayerX・キャディ・ラクスルに聞く、大手企業を動かす営業のリアル
【市場価値向上へ】IT企業におけるエンタープライズセールス攻略の最前線
今回のテーマは、IT業界で注目されているキャリアの一つである「エンタープライズセールス」。
大手企業を対象に、数億・数十億規模のプロジェクトを推進する。このようなダイナミックな業務において、どのようなスキルが求められ、成功への鍵は何なのでしょうか。
本記事では、LayerX、キャディ、ラクスルといった先進的なIT企業のエンタープライズセールス責任者らが登壇したトークセッション『RAKSUL SALES MEETUP#2 -大手企業を動かす営業ノウハウのすべて』から、その実態と攻略法を深く掘り下げて解説します。
エンタープライズセールスとは何か?各社の定義とアプローチ
エンタープライズ(以下、エンプラ)の定義は、企業ごとに異なります。
- LayerX:従業員2,000人以上をエンプラと定義。初期の大規模契約より「小さく導入し、拡大する」ランド&エクスパンド戦略を重視する。アカウント開拓と、短リードタイムでのサービス導入を優先。業界の類似性や過去の成功事例を基に展開の型化を探る。
- キャディ:事業規模、従業員数、拠点数などから総合的に判断。部門や事業所単位への導入から全社展開を目指し、エンプラ企業にはチームセリングで挑む。
- ラクスル:従業員数1,000名以上を大企業と定義。印刷・販促物の多様なニーズから従業員数をキーファクターと設定。決済責任者や経営層へのアプローチを重視し、特定の商圏があり、印刷物や販促物の使用量が多い業界業種(例:フィットネスジム、塾、MRなど)の拠点攻略に注力。
このように、「エンプラ」の捉え方や戦略は、各社の事業特性に応じて様々です。
エンプラ攻略の鍵:「ランド&エクスパンド」と「価値拡大」の実践

案件を小さく開始し、徐々に拡大していくランド&エクスパンド戦略は、多くの企業で共通認識となっています。しかし、その後の拡大フェーズで課題に直面することも少なくありません。各社はどのようにこの課題に取り組んでいるのでしょうか。
- オフラインイベントによる関係性構築
- LayerXの鈴木氏は、導入後の顧客との「パワーチャート」作成と、オフラインイベントでの関係構築の重要性を強調しました。自社のプロダクト開発のスピードの早さを武器に、イベントで定期的に新プロダクトを紹介することで顧客との関係を深化させています。
- 「価値の幅」を広げる重要性
- キャディの佐々木氏は、プロダクトの進化や新たなアプリケーションによる価値提供はもちろん、顧客の経営課題に深く踏み込み、事業部長や経営陣の関心事を捉えることが、大規模な予算獲得につながると指摘します。エンタープライズだと一つの事業部でも大きなサイズになりますが、その中でも最短で成果を出し、CADDiの価値をご理解いただいて他の事業部へと広げていきます。単なる要望対応に留まらず、顧客の事業全体を理解し、戦略的な提案を行う能力が求められます。
- 「小さな成功体験」の積み重ね
- ラクスルの白石氏は、案件を小さく獲得することのメリットを重視しています。「小さく獲得できた方が成功体験を得やすく、お互いに対する過度な期待をせずに済む。規模が大きいほどリスクも大きくなることを理解しておく必要がある」と述べ、小さな成功体験や失敗体験を積み重ね、PDCAを数多く回すことで、次の提案に繋げていくことの重要性を説きました。
経営層と対峙するための「教養」と「準備」
エンプラセールスとして企業のトップ層と対峙するためには、何が求められるのでしょうか。
- LayerX鈴木氏の「教養を高める」
- 鈴木氏は、かつて指摘された「教養を上げろ」という言葉を引用しました。商談時以外でも積極的に人と会う機会を設け、フラットな情報交換を通じて経営層の方々と会話する練習を意識しているとのことです。また、業界知識については、その業界のプロフェッショナルには及ばないというリスペクトを忘れず、相手から教えていただく姿勢で耳を傾け、知識を吸収することも大切だと語っています。
- 鈴木氏は、かつて指摘された「教養を上げろ」という言葉を引用しました。商談時以外でも積極的に人と会う機会を設け、フラットな情報交換を通じて経営層の方々と会話する練習を意識しているとのことです。また、業界知識については、その業界のプロフェッショナルには及ばないというリスペクトを忘れず、相手から教えていただく姿勢で耳を傾け、知識を吸収することも大切だと語っています。
- キャディ佐々木氏の「会う価値のある存在となる」
- 佐々木氏は、「経営者にとって会う価値のある存在であるか」が最も重要であると語ります。趣味を通じた人間関係の構築も有効ですが、自社の持つテクノロジー、情報、あるいは事例を通じて価値を提供するアプローチも重要です。いずれの場合も、常に学び、準備することで、人と人との繋がりによってのみ生み出される付加価値を体現するべきだと述べています。
- 佐々木氏は、「経営者にとって会う価値のある存在であるか」が最も重要であると語ります。趣味を通じた人間関係の構築も有効ですが、自社の持つテクノロジー、情報、あるいは事例を通じて価値を提供するアプローチも重要です。いずれの場合も、常に学び、準備することで、人と人との繋がりによってのみ生み出される付加価値を体現するべきだと述べています。
- ラクスル白石氏の「徹底した準備」
- 白石氏は、「とにかく準備」が重要であると断言します。顧客を徹底的に調査し、自社の役員にどう協力してもらうか、何回の商談で契約に至るかなど、何度もシミュレーションし、考え抜くことこそが、「エンタープライズセールスの醍醐味」であり、不可欠な要素であると語りました。
育成と採用:素養と「探偵」としての資質

若手のセールスパーソンがエンプラセールスとして成長していくためには、どのような素養が求められるのでしょうか。
ラクスルでは、ワークサンプル(プレゼンテーション形式の面接)を通じて、応募者が自社をどれだけ深く調べ、論理的に思考できるかを見極めています。
キャディの佐々木氏は、「完璧な、どこの会社でも活躍するエンプラセールスは存在しない」としつつ、その会社独自の「色」と個人の強みを理解することの重要性を説きます。
ロジカルな課題解決能力、優れたヒアリング能力、チームを巻き込む力など、多様なスタイルが受け入れられると説明しました。また、エンプラセールスは最初から完璧にこなせるものではなく、学習意欲、そして複雑な課題を解き明かす「探偵ごっこ」のような楽しさを感じられる人が向いていると語りました。
LayerXの鈴木氏は、新卒や若手に対しては「素直で良い人間性」であることを重視しています。中途採用においては、以下の4つの視点で候補者を見極めているとのことです。
- 社会貢献への意欲:LayerXを通じて社会にどのように貢献したいか
- カルチャーフィット:LayerXのカルチャーをどのように捉えているか
- チームへの意識:共に働く仲間とどのような関係性を築きたいか
- 自己成長意欲:自身がどのように成長したいか
特に最初の二つの視点は、大企業の経営層との視座を合わせる上で重要であると述べています。
組織としての成長:属人性と仕組み化の適切なバランス
セールス組織をスケールさせる上で、個人の能力に依存する「属人性」との向き合い方は常に課題となります。
キャディの佐々木氏は、「良い属人性」と「悪い属人性」が存在するとし、前者は「組織のレベルを向上させ、新たな価値を生み出す」ような自由度のある属人性を指します。後者は無駄や非効率なプロセスであり、これらは仕組み化によって改善すべきであると提言しました。
LayerXの鈴木氏は、ある程度の組織階層(ファーストラインからセカンドライン程度)であれば、各メンバーが気軽に情報交換できる関係性が重要であると述べています。また、AIツールを活用して議事録の要約や商談動画の共有を行うことで、属人性に頼らずナレッジを共有する取り組みを紹介しました。ロープレを徹底することで、基本的な「型」を習得させ、その上で個々のアレンジを許容する「守破離」のアプローチも有効であると語っています。
ラクスルの白石氏は、組織の状況が良い時は「散」(あえて属人性を許容し、楽しさやモチベーションを高める)を、悪い時は「集」(効率化と集中)を使い分けることで、良い属人性を活かすことを意識しているとのことです。
結論:エンタープライズセールスは「変革の推進者」

本トークセッションを通じて、エンタープライズセールスは単なる「営業職」の枠を超え、顧客企業の事業変革を推進する「ビジネスプロデューサー」としての役割を担っていることが明らかになりました。そこには、高いビジネスリテラシーと人間力が求められます。
エンタープライズセールスを目指す方々にとって重要となるのは以下のポイントです。
- ランド&エクスパンド戦略の理解と実践:小さく始めて大きく育てる粘り強さ
- 価値の拡大への意識:顧客の経営課題に踏み込み、より上位レイヤーのニーズを捉える力
- 「教養」と「準備」の徹底:経営層と対等に議論できる知識と、入念な事前準備
- 「素直さ」と「学習意欲」:新しい知識やフィードバックを積極的に吸収し、常に成長し続ける姿勢
- 「良い属人性」の追求と「悪い属人性」の排除:組織として成果を最大化するためのバランス感覚
対談の最後に出た印象的な言葉があります。
「セールスはどこでも通用する“ポータブルスキル”になる。AI時代、むしろその価値は上がっていく」
現場を熟知する3社の登壇者は、口を揃えて営業の未来をポジティブに語っていました。
エンタープライズセールスは容易な道ではありませんが、顧客の事業変革に貢献し、大きな成果を生み出す、非常にやりがいのある職種です。
本記事が、皆様のキャリアプランニングの一助となれば幸いです。
また、ラクスルでは、エンタープライズ事業をはじめ、さらなる事業成長・変革を共に担うメンバーを全社で大募集中です。
ご興味のある方は、ぜひ一度カジュアル面談や、弊社主催のイベントにお越しください。
ご応募・お問い合わせ、お待ちしております!
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