CTO竹内に直撃!真のDX組織は「解像度」にこだわる
ラクスル株式会社 上級執行役員 グループCTO
竹内 俊治
Toshiharu Takeuchi
2002年に東京工業大学大学院を卒業後、在学中から関わってきたコンピュータグラフィックスを手掛けるベンチャー企業に勤務。IPOを経験した後、2011年に楽天グループへ転職し、カナダやシンガポールに赴任。帰国後、複数事業の開発責任者(General Manager)として、国内・海外拠点のマネージメントや子会社、子会社のPMIなどを含めて全体として400~500人規模の組織を直接・間接に牽引。合わせて同社のメディア・エンタメ部門のデータ利活用の責任者も兼務。2022年にウェルスナビへ参画し、CTOとして成長ベンチャーの基盤・体制を強化。2024年2月より現職。
今、CTOに求められるのは「事業戦略と技術戦略を紐づけること」
——この取材では、新体制下のRAKSULにおける技術戦略について詳しく伺いたいと思います。まずは、簡単に自己紹介をお願いできますか?
学生のころからビジネスに関心があり、ファーストキャリアではベンチャー企業を選んでIPOを経験しました。その後に楽天(現・楽天グループ株式会社)へ転職し、国内外さまざまな事業やPMI(Post Merger Integration)にマネージャーとして携わります。楽天退職後は、ウェルスナビにてCTOおよび執行役員として、新NISAのプロジェクトなどに関わりました。そんな中でRAKSULからオファーをいただき、複数事業のマネジメントや開発、海外進出など、これまでの自分のスキルをフルに生かせる機会があると知りました。「これは面白そうだ」と思い、CTOとしてジョインすることにしました。
——現在、竹内さんはRAKSULのグループCTOとして、ラクスル事業とノバセル事業の横串のテック組織を牽引されていますが、CTO(最高技術責任者)の役割についてどのように考えていますか?
CTOは、企業がどのフェーズにいるかによって役割が変わると考えています。例えば、創業期のスタートアップではとにかくコードを書いてプロダクト開発に注力します。一方、楽天のような大企業では、ディレクションやマネジメントが主な業務となり、自分でコードを書いていると怒られる(笑)。
今、RAKSULのグループCTOとしての役割を考えると、大きく2つあります。ひとつは、事業戦略と紐づいた技術戦略を描き切ること。もうひとつは、事業戦略に沿った開発組織を立ち上げ切ることです。
——なるほど、具体的にはどのような取り組みを行いますか?
「顧客基盤」と「決済基盤」の整備を、技術的リーダーシップを取りながら進めていくことが大切だと思っています。
顧客基盤の整備については、当社が推進しているM&A戦略との関わりも強いです。M&Aでグループインする企業は、印刷EC「ラクスル」に登録いただいている250万を超えるSMB(中堅・中小企業)や個人事業主を中心としたお客さまにアプローチをしたり、IDの連携をすることが可能になり、大きな事業成長のドライバーを獲得できます。お客さまから見ても、同一のIDでさまざまなサービスを利用できるようになり便利です。結果として、統合後のシナジー創出に寄与できます。
また、当社のサービスで提供する決済手段もさまざまです。法人向けには、クレジットカード払いや銀行振込だけではなく、請求書払いもサポートします。これにより、お客さまの経理業務はシンプルになり、その効果は決済のボリュームが増えるほど高まります。当社のサービスをお客さまが使ってみようというきっかけになると思うんですね。
RAKSULのエンジニアを知るキーワードは「ゼロイチ」と「解像度」
——RAKSULのエンジニアの、コア・コンピタンス(競争力の源泉)は何ですか?
ゼロイチができるエンジニアが多くいることです。これまで、当社はいくつもの運営事業・サービスを成功させてきました。例えば、広告事業の「ノバセル」や物流事業の「ハコベル」など、複数の産業領域のサービスを社内で立ち上げています。
これらのサービスは、それぞれ大きく成長しています。当社のように、新規のプロジェクトを繰り返し成功させる企業は、日本ではそう多くはないと思っています。他社が模倣することは容易ではないはずです。
——どうしてRAKSULはそのような強みを持つことができたのでしょうか?
高い「解像度」を持って取り組んでいるからです。私たちはよく「解像度」という話をします。開発チームは、マーケット分析から得る情報をインプットするだけではなく、一人ひとりがプロダクトに対して最適なUI/UXを追求し、コーディングをします。そして、お客さまからのフィードバックを踏まえて課題に対する理解を深め、改善することを繰り返す。この一連の流れの中で「解像度」をあらゆるところに求めるのが、当社が大切にしているやり方です。
RAKSULに今ジョインする意味、ハイパフォーマーに求められる資質
——活躍したいエンジニアにとって、RAKSULに今ジョインすることへの魅力を教えてください。
RAKSULにジョインすることで人材市場での価値は高まるでしょう。なぜなら、当社はDX組織としては類を見ないほど成熟していますし、ゼロイチのプロセスに当事者として関わる機会が豊富だからです。また、当社のエンジニアは技術力だけではなく事業への深い理解を通じて、真のDXを実施できる地力を養えます。
リアル産業におけるDXのひとつの定義は、技術を手段として産業構造を変革することです。例えば、かつての印刷産業は川上から川下へ下請け、孫請けといった形の多重下請け構造で受発注が成立していて、当然、中間マージンが発生していました。当社が立ち上げた印刷EC「ラクスル」は、この構造の課題に着目。ダイレクトに需要者と供給者がマッチングするエコシステムを生み出し、印刷産業の構造を変革してきたわけです。
——RAKSULではどのような人たちが働いているのでしょう?
RAKSULは平均年齢が30代前半と若く、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が所属しています。私のように大企業や他のメガベンチャーで経験を積んだメンバーも多くいます。また、当社の開発チームは東京をはじめとする国内だけでなく、ベトナムのホーチミン市にも展開しています。多様性とは競争力の源泉であり、当社では多様な人材による多彩な視点をとても尊重しています。
——では、どのような人材が高いパフォーマンスを発揮して活躍できるのでしょうか?
RAKSULのハイパフォーマーは一様に、自ら問題を発見し、解決策を探す過程で周囲を巻き込み、アウトプットを生み出すことに長けています。
スキルに関しては、技術スタックを適切に選べる柔軟性が求められます。特定の技術に固執するのではなく、問題解決に最適なツールを手段にできることが、大きなインパクトを生むために肝要です。例えば、「Rubyしか触りたくありません」という人も活躍はできると思いますが、ツールに固執しているため大きなインパクトを生めるかと聞かれると難しいでしょう。プログラミング言語も手段のひとつでしかないからです。
優れたコミュニケーション力も不可欠です。傾聴と発信を高いレベルで実行できる人材こそが、問題解決に向けて効果的に周囲を巻き込み、自走できると考えています。
グローバルで成功する日本のテック企業を育てるには、エンジニアの力が必要
——たくさんのお話をありがとうございました。最後に、RAKSULへの入社を考えている方に向けてメッセージをお願いします。
私は、日本のソフトウェア産業に対して強い危機感があります。現状として、海外で成功している日本のソフトウェアやITサービスは非常に少ない。Google やAmazonのような巨大スタートアップもさることながら、特定のサービス分野においても、SpotifyやDAZNのようなグローバルな成功事例はほとんどありません。もちろん、既に海外で頑張っている企業もありますが、全体を見るとごくわずかです。
当社は国内での成功を糧に、海外でも事業を進めるテック企業を目指しています。そのためには、積極的に海外へ開発拠点を構えて、グローバルな視座を事業に取り入れる必要があります。例えば最近、新たなサービスをマレーシアで展開し始めましたが、成功の鍵となるのはローカライズであり現地の実情がわかる多様な人材をいかに上手く活用できるかだと思います。
当社がさらに成長しグローバルでも成功するためには、エンジニアが事業戦略に対して適切にフィードバックできる環境づくりが大切です。彼らの意見を上手く取り入れられれば、エンジニアは開発者としての域に留まらず、事業戦略の形成者としての役割も担えるようになります。当社で重視しているこのような視野を持ちたいエンジニアの方は、ぜひ一緒に働きましょう。