変革期を迎えたRAKSULで、戦略・M&A・オペレーション支援をリード。CSO田中丸が大切にしていることとは?
ラクスル株式会社 執行役員 グループCSO
田中丸 雄一郎
Yuichiro Tanakamaru
2008年に大学を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに新卒入社。数多くの日系企業の戦略コンサルティングを担当する。2015年にヤフー株式会社(現・LINE ヤフー株式会社)へ転職し、企業戦略本部にてLINE、ZOZO、delyとのM&A業務をリード。その後、同社のCEO室に異動し、本部長を務める。2024年1月、ラクスル株式会社にCSO(Chief Strategy Officer)として参画。
変化の激しいIT業界の中でも、RAKSULは特に大きな変化の真っただ中にいる
――まずは、田中丸さんのこれまでのキャリアを教えてください。
2008年に新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタントとして入社し、2015年にヤフー(現・LINEヤフー株式会社)に転職。そして、2024年1月にRAKSULにCSOとして入社しました。
マッキンゼーでのメイン業務は、クライアントの事業戦略を作ること。事業戦略の策定と言っても、取り組むことは多岐に渡ります。ここで、ビジネスパーソンとしての足腰が鍛えられました。
ヤフーでは、LINEとの経営統合やZOZOとの資本業務提携といったM&Aの現場責任者を経験した後、CEO室に異動。経営戦略や人事制度など、社内の様々な方針を検討する際の、社長の“壁打ち役”をしていました。
――なぜコンサルティングファームのマッキンゼーから、IT業界のヤフーに転職されたのでしょうか?
より変化が激しいところに身を置きたかったからです。コンサルティングファームのクライアントは、業界関係なく大手老舗企業がほとんどです。世の中が加速度的に変わっていく時代なのでもちろん大企業も常に変革を考えてはいますが、次々にイノベーションが起こるIT業界の変化のスピード感は段違いと感じました。その環境に身を置くのは純粋に楽しそうと思いましたし、私が極めたかった「戦略を考える」スキルは、変化の大きい場所でこそより経験が積めると考えていたことも、大きな理由です。
――なるほど。では、ヤフーからRAKSULへと、同じIT業界内で転職した理由も教えていただけますか。
まず、現在のIT業界の中でも、特に変化が大きい会社がRAKSULだと思いました。私がヤフーからの転職を考え始めた頃と同時期に、ラクスルの社長が交代しました。ヤフー在籍時、社長交代は何度か経験していて。その度に、事業戦略や人事制度、そして会社の軸となるバリューも一気に変わりました。方針の変更には、大きなリスクが伴います。それと同時に、大きな可能性も秘めています。ゼロから新しい方針を描くのは、ものすごくスリリングで面白かった。RAKSULは、まさに今がそのタイミングです。ただでさえ変化が大きいIT業界の中でも、激しく揺さぶられるフェーズにいます。「戦略」を考えることが武器の私にとっては、非常に魅力的なタイミングでしたね。
また、ヤフーのような時価総額数兆円規模の上場企業が増えると、日本はより良くなると思っています。私は学生時代から、「日本を良くしたい」という想いを持っています。就職や転職でも、その軸は大切にし続けています。例えば、マッキンゼー時代は、あえて日系企業ばかりを担当していたくらいです(笑)。
日本を良くするには、日本の企業を強くする必要がある。そのためには、すでに成熟している企業ではなく、成長途中の企業を支援して、ヤフーに並ぶような体力も影響力もある会社を増やしていく必要があります。転職活動中にRAKSULの代表・永見と話をして、ラクスルはそうなる可能性に溢れた会社だと感じました。それも、ジョインを決めた理由のひとつです。
数々のM&Aをリードしてきたからこそ思う、M&Aの重要性と課題
――では、RAKSUL入社後についても教えてください。田中丸さんは、CSO(Chief Strategy Officer/最高戦略責任者)としてどのようなミッションを担っているのでしょうか。
私のミッションは大きく分けると、戦略・M&A・全社的な整理の3つです。
まず戦略について。先程もお話ししたように、RAKSULは昨年に社長が交代したばかりです。新たな戦略を描くことは決まっていますが、その方向性はまだ完全には定まっていません。私は、戦略を決めるためのファシリテーションや取りまとめをしています。
次に、M&Aについて。どのような方針でM&Aを進めていくのか、そのためにどのような企業のM&Aをしていくのか。話が具体化してからの推進や交渉も管掌領域です。
最後に、全社的な整理について。いくら戦略や方針を練っても、実行がうまく進まないと意味がないですよね。戦略や方針を定める場の設定・運営だけでなく、それらの推進や進捗管理をサポート・整えていくのも私の役目です。
――現在、RAKSULではM&Aを積極的に進めていると思います。
はい。既存事業の周辺領域をメインに、1年あたり数件の連続的なM&Aを進めているところです。余談なのですが、現在所属しているStrategyチームは、実は私を含めて2人のみ。これからM&Aにさらに力を入れるため、採用も積極的に行ってチームを拡大していく予定です。
――田中丸さんは、前職からM&A業務に携わっていますよね。田中丸さんが考える、M&Aの可能性や面白さを教えていただけますか。
会社の成長のためにはサービスや事業の立ち上げ・拡大が欠かせませんよね。ただ、それをゼロから作るとなると、莫大な時間、お金、人員が必要です。例えば、社内のリソースのみで新規事業を立ち上げようとすると、既存事業からリソースを充当しなければいけません。そうなると、新規事業側と既存事業側で、限られたリソースの奪い合いが起こってしまいます。もちろん新規事業担当者は必ず成功させるんだという熱量を持っていますが、客観的には成功確率も高くはない。一方、M&Aを活用すると、新規事業開発におけるリソースと時間の問題の多くを一気に解決できますし、成功確率も上がります。これが、M&Aが持つ大きな可能性だと思いますね。売り手企業様を尊重して対等に向き合い、PMIの成功に導いていけば、RAKSULグループ全体の成長速度を上げることができます。
ただ、M&Aの「面白さ」を切り口にすると、難しいなと感じているのも正直なところで……。先程も話したように、自分たちでゼロから事業を立ち上げるのは、非常に大変です。だからこそ面白いし、「自分たちが育てた」という思い入れも強くなる。一方で、経営層だけで話し合ってM&Aを実施しグループインした事業を、「今日から我が社の一員です。別け隔てなく仲良くしましょう」と言われても、社員は困ってしまいますよね。このときに、適切なコミュニケーションを取っていかないと、「M&Aは面白くない」「社員には関係のない話だ」と思われるリスクがあります。
M&Aの重要性や面白さを社内に浸透させていくのも、CSOである私の大事なミッションのひとつです。
RAKSULは、議論とアクションのバランスが良い組織
――田中丸さんがRAKSULに入社する前と後で、RAKSULに抱いていた印象に変化はありましたか?
少し質問から逸れるかもしれませんが、私はこれまで教科書的なアプローチよりも、実践的なアプローチを重要視してきました。RAKSULでも変わらず、この思考で組織をリードしていきたいと考えていたのですが……。RAKSULのメンバーはみんな、私が大事にしている思考を既に体現していたんですよ。むしろ、私以上だったかもしれません。
例えば、入社後のオンボーディングで「ミーティング中に良いことが言えないんですよね」と話したところ、「そんなの気にしなくていい。うちでは言動は評価対象にならないから。それよりも、行動や成果を期待している」と言われて、衝撃を受けました。もちろん、RAKSULにも会議など議論の場は多々あります。でも、「議論するのは、その先にあるアクションのため」という根っこの部分を、会社全体でしっかり持っている。議論とアクションのバランスがすごく良いんです。
――田中丸さんはCSOとして組織をリードしていく立場でジョインされています。事業運営や組織づくりで、これまでに意識されてきたことがあれば教えてください。
いろいろあるのですが、特に意識していることを1つ挙げるとすれば「他己紹介ができる関係性」を築くことです。言い方を変えると、1週間に1度の1on1だけでなく、ちょっとしたことでもすぐに相談できるチーム作りを意識してきました。
例えば、上司に話しかけるのって一定の心理的ハードルがあるじゃないですか。それを下げるには、「会話の量」が大事だと思っています。メンバーとは雑談も含めて、かなり密にコミュニケーションを取るようにしていますね。相手のことをよく知れるし、その結果たくさんのアイデアやアウトプットが生まれるきっかけにもなる。まだRAKSULにジョインして日が浅いですが、円滑なコミュニケーションのもとでスピーディに物事が進んでいる実感があります。
これからRAKSULがさらに成長し続けて、いずれ大企業になっても、変わらずに大切にしていきたい考えですね。
CSOは、会社を良くするために柔軟に役割を変化させる「何でも屋」
――最後に、RAKSULのCSOとしての今後の展望を教えてください。
私の3つのミッション、戦略・M&A・全社的な整理と絡めた展望をお話しさせてください。
最初に戦略について。どんなに経営陣が「良い戦略だ」と思っても、社員みんなが腹落ちして、能動的に実行できるようにならなければ意味がありません。
その戦略が生まれた背景・重要性・実現可能性を、社内に発信し納得してもらう。それが、CSOの重要な役割だと思っています。関係各所と協力しながら、「経営体制の刷新は、RAKSULの成長を加速させるポジティブな変化だった」と思ってもらえるよう、これからも尽力します。
次に、M&Aについて。M&Aを積極的に進めていく方針は固まっています。ただ、常に「本当に会社のためになっているのか?」を自問自答しながら、数ばかりを追うのではなく、売り手企業様や既存社員としっかりと向き合って一つひとつ丁寧に取り組んでいきたいですね。それが、会社の成長につながると信じています。
最後に、全社的な整理について。戦略や方針を「絵に描いた餅」にしないことも、私の大事な役割です。実行に移すためのフローを整えて、結果が出るまでしっかり後押しします。
そしてもう一つ。会社のために必要なことなら、何でもやる人でありたいと思っています。CSOは、他のCxOに比べて役割が分かりづらいポジションですよね。だからこそ、何でもできると思っています。例えば、管掌外の予算編成の進め方について意見したこともありますし、全社イベントの内容・メッセージについて裏で関わったりしています。
目立つポジションではないけれども、その場に応じて柔軟に対応ができるのも、CSOの特徴のひとつです。会社の未来を左右する経営陣がより良い意思決定をしていけるよう、柔軟に役割を変化させてRAKSULに貢献していきたいですね。