“産業の再編”を標榜する成長企業で、人生のキャリア資産を増やしていってほしい
ラクスルを卒業したOB/OGたちは、ラクスルで何を学び、今にどう生かしているのでしょう。ラクスル創業メンバーとして採用・組織づくりを担い、株式会社ReBoostを創業した代表取締役・河合聡一郎さんに話を聞きました
株式会社ReBoost代表取締役
河合 聡一郎
Souichirou Kawai
法政大学経営学部卒業後、印刷機械メーカーに入社。以降は、リクルートHRマーケティング(現リクルートジョブズ)にて求人メディアの営業、パートナー企業の育成PJTを担当。その後、株式会社ビズリーチの立ち上げに携わる。セールスフォース・ドットコム、コニカミノルタを経て、ラクスル株式会社に創業メンバーとして参画。人事マネージャーとして、経営陣と共にダイレクト/リファーラル・リクルーティングを用いたタレント・アクイジションや、採用広報、制度周りなど幅広い実務を担当。2017年、株式会社ReBoostを創業し代表取締役就任。2020年4月、iU専門大学の客員教員に就任。2021年、経産省PJT「SHIFT(x)」審査委員。
このビジョンを語れる人についていこう。直感でラクスル参画を決めた
――ラクスルとの出会いを教えてください。
2010年の年初くらいにTwitterで 、創業間もないラクスルCEOの松本さんを知ったのがきっかけでした。
僕は当時、コニカミノルタで産業用の大型印刷機の営業とマーケティングをしていました。実家が印刷機械の商社を経営しており、事業を継ぐ前提でそれまでのキャリアも選んできたんです。リクルートで営業を学び、ビズリーチでスタートアップの立ち上げに触れ、「30歳になったから家業に戻ろうかな」と思っていました。家業の社長でもある父親からは「業界のことをきちんと勉強しなさい」と言われていたこともあり、コニカミノルタで印刷領域の経験を積んでいました。
旧態依然とした印刷業界を知るにつけ、家業をどう伸ばしていこうかモヤモヤが募っていました。そんなときに、偶然にもプレスリリースの記事をTwitterで目にして、ラクスルCEO松本さんの事業ビジョン「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を知りました。
「印刷業界にテクノロジーを入れようとしている人がいる!」と、興奮しつつ興味を惹かれたのと同時に、ビジョンにものすごく共感したんです。「その通りだ!絶対にこの人に会いたい」とすぐにDMを送り、「印刷業界の知識とスタートアップの経験があります」と伝えました。
当時、松本さんの自宅兼オフィスがあった新宿御苑のカフェでランチをさせていただき、その週末にはもうオフィスに通い始めました。
――初対面のランチから、すぐにラクスル参画を決めた理由とは?
意気投合したんですよね。なぜかという言語化が難しいんですが、将来自分の人生を振り返ったとき、大きく影響を与えた重要な人物として、自分史における“太文字になる人”だと思ったんです。ものすごく頭が良くて素直な人で、印刷業界という古い産業に無邪気に飛び込もうとしている。A.T.カーニーを辞めて「1日3食500円で生活している」と笑顔で言うんですよ。その行動力であんなビジョンを創ることができる人ならばついていこう、僕にできることは何でもやろう、と心の底から本気で思いました。
――参画当初のラクスルの状況、環境について教えてください。
共同創業者の利根川裕太(現「みんなのコード」代表理事)さんの他1-2名がすでに副業でジョインしていました。平日は各自自分の本業をして、夜はラクスル、土日もラクスルという生活です。松本さんの営業に一緒についていったり、当時の価格比較サイトの広告営業をしてみたり、どう事業拡大するかホワイトボードを前に議論したり。スタートアップなので自分にやれることは何でもやっていましたね。
「人を採用するなら、より広い場所が必要になるね」と、浜松町へのオフィス移転が決まり、その後、少し時間が経ってから正式に社員として入ることになりました
自分より優秀な人を口説いて連れてくる、強い組織の土台となる価値観を醸成できた
――ラクスル在籍中は採用や組織づくりに従事していらっしゃいました。役割はどのように決まっていったのでしょうか。
職位が絞られたのは2013年くらいだったと思います。
初期は、営業やその他、発生しうる様々な業務を担当していました。ラクスルのビジョンを達成するためには何が必要かということに焦点を当てた結果、人と組織の重要性に行き着きました。2011年から、インターンシップをやろう、派遣のコールセンターメンバーの採用をしようと、求人媒体を使ったり派遣会社を開拓したりして、仲間を増やしていきました。人事経験はゼロでしたから、ラクスルの実務経験を通じて学んでいきましたね。
――ラクスルでのご経験を教えてください。
人事・採用のキャリアを身につけられたのは、ラクスルのおかげです。「ちゃんとした組織がなければ、ちゃんとした事業は創れない」というカルチャー創りに寄与をさせてもらい、自分たちのビジネスがスケールしていく上で、どんな人材が適しているかを分析/定義しながら、自分よりも優秀な人を連れてくるんだ、と徹底的にこだわって採用活動に取り組んできました。そこは、ラクスルに貢献できたことかなと思っています。
2014年2月に14億円の資金調達が決まったのですが、その先を見据えて、経営とファイナンスのプロフェッショナルな人材が絶対に必要だと感じ、13年の大晦日に永見世央さん(ラクスル取締役CFO)に、何度もスカウトメールを送り、正月明けに松本さんに会ってもらいました。
また同年8月には、マーケティング領域で高い実績のある田部正樹さん(ラクスル取締役CMO兼ノバセル代表取締役社長)が参画。TVCMを流そうと決めたタイミングで、田部さんの経営と高いレベルでマーケティングを体現されてきたご経験が絶対に必要だと考え、 スカウトを送っていました。また自らもエンジニアをリファラルで採用したりと、様々な形で、採用活動にコミットをしていました。
資金面でも人材面でも14年はラクスルの大きな転換期でした。翌15年2月には40億円の資金調達を実施し、「強い採用で、事業を大きくしていく」という組織づくりの土台創りに、少し貢献できたのかなと思っています。
――人事評価制度の立案など、ラクスルの組織運営面にも関わっていらっしゃいましたが、そこで強く意識したことはありましたか。
人事評価制度に「組織貢献」という項目を提案したのを覚えています。グレードが上にいくほど、「組織を創り、運営に携わることができるか」が強く求められる評価設計にしたんです。松本さんとは「これからのラクスルには、組織を創ることができる人材が絶対に必要だ」とよく話していました。今もカルチャーとして根付いているのが嬉しいですね。
――ラクスルで得られた力、今につながる考え方は何ですか。
「お客様はどんな人か? 」「そのためのサービスを作っていく」という事業の根本は、ラクスル創業期から常にミーティングで議論されていたと思います。ラクスルにいると「課題設定力」をとことん突き詰められるんです。「何が課題なの?」「本当にそれが課題なの?」「なぜ課題なの?」と問われ続ける。「あるべき姿から逆算し、課題から考える」、「マクロがどうなっていて、時間軸でどうなっていくかを想像する」、「仕組み化して、再現性や拡張性を大切にする」という思考のクセや仕事への取り組み方は、とても貴重なものだったなと思っています。
「自社で活躍してもらう人材を定義して、優秀な人材を採用する」というこだわりも大事な気づきでしたね。
ラクスルに参画する以前に1年間携わっていたビズリーチでの経験も影響しているかもしれませんが、創業者の南壮一郎さんが、どんどん素晴らしい方々を巻き込んで採用し、事業を伸ばしていくのを間近で見ていました。
ラクスルでも、「自分より出来る人を連れてきたほうが、事業は伸びるし、自分も勉強になる」と日々実感して体現できました。その思いは今もぶれることはありません。
多様な産業ドメインと成長フェーズの事業に触れられる、貴重なキャリア価値
――ラクスルを卒業し、ReBoostを創業したきっかけ、背景を教えてください。
ラクスル時代から、スタートアップの経営者の相談に乗り、副業として採用や組織づくりの支援をやっていたんです。
松本さんが「採用や人事は、会社を再加速・再起動させる仕事でいいよね」とぽろっと口にして、再起動を意味する「reboot(リブート)」というキーワードをくれました。
いい名前だなと思いましたし、これまでのキャリアを振り返っても、スタートアップの初期を2社経験しているのは僕の強みだなと思いました。2017年2月に、「ラクスルを辞めて、起業にチャレンジしたい」と松本さんに伝えました。
社名には“S”を加えて、これまでのキャリアでお世話になった会社のアルファベットを入れたReBoostにしました。
――卒業を宣言した際、松本さんはなんておっしゃったのでしょう。
「いいと思うよ!応援するよ!」と背中を押され、「これからスタートアップはどんどん増えていく。河合の経験は絶対に活きる」と言ってくれました。
とても応援してくれましたし、嬉しかったのを今でも覚えています。そして、起業後も定期的に朝食会を開いてくれて、事業の相談に乗ってもらっていました。人の活躍を喜ぶ、ラクスルらしさだなと思いました。
――ReBoostでの事業内容と、ラクスルとの関わりについて教えてください。
「変革者の挑戦を支援し、より良い社会づくりを」をミッションとして、スタートアップを中心とした採用戦略や実行支援、スタートアップへの出資、組織開発や評価制度、バリュー策定 などを幅広く手掛け、経営者と伴走しながら課題解決に取り組んでいます。ほかに、ベンチャーキャピタル(VC)の支援事業として、VCの評価制度づくりや採用活動にも、一緒に取り組んでいます。
ラクスルとは、あらゆる事業部での採用戦略策定やその実行面で大変深く、多面的に関わらせていただいています。採用活動だけでなく、採用上の広報戦略を一緒に考えたり、人材要件の言語化から一緒に練ったりすることもあれば、求人原稿作成やスカウト業務などの具体的な採用活動をサポートすることもあります。
例えば、ラクスル事業とは採用ブランディングや、若手層の採用戦略に取り組ませて頂いたり、ノバセル事業とは2年半以上、田部さんと採用戦略の全体設計と実行までを進めています。最近では、グループ会社のダンボールワンや、ペライチなども関わらせて頂いていました。あらゆる社員の方々から、「採用でこんなことに困っているんですけど…」と気軽に相談いただける関係が続いているのはとてもありがたいですね。
――ラクスルOBである河合さんが、ラクスルに直接関わることの強みはどこにあると思われますか。
ラクスルのカルチャーや歴史を理解し、共通言語が多い中でディスカッションできることかなと思っています。加えて、現在は様々なスタートアップ企業の採用・組織づくりを手掛けているので、多様な業界の情報を用いながら提案できるところだと考えています。
ラクスルを社内から見ていた視点も持ちつつ、他社スタートアップの知見を合わせてラクスルを外から客観的に見ることできます。「社外から見ると、ラクスルは採用においてこんな強みや、アプローチの方法がありますよ」などと提案ができ、情報を立体的に持っていることが強みになっていると思います。
――今後、ラクスルとどう関わっていきたいか、期待することはありますか。
ラクスルは、卒業した人へのリスペクトがあって、信頼してくれる会社だなと感じています。仕事以外の関わりでも、社員向けイベントに呼んでいただくなど気にかけてくださりますし、こうしたインタビューの機会を頂けるのも感謝しています。 今後も良い関係を続けていけたらうれしいです。
また、ビジョンにある、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を、あらゆる産業に対して取り組まれていくことをとても楽しみにしています。
ノバセルやジョーシスなど、どんどん新しい事業が生れていますし、どんなチャレンジが次にあるのか、ワクワクしています。
また、テクノロジーとオペレーション、ビジネスディベロップメントと、あらゆるプロフェッショナルな方々が融合している組織はなかなか、ないと思うので、そこでチャレンジされている方々にとって、今後の組織としての変化も楽しみです。
――最後に、ラクスル在籍メンバー、これからラクスルに入ってくるメンバーへのメッセージをお願いします。
数ある選択肢の中から、ラクスルを選んで頂き、本当に感謝しかないです。と言うのが最初のメッセージです。高い採用水準をクリアされて入っている方々は、素晴らしい方々ばかりだろうなと思います。今の自分なら通過する自信はないですね(笑)
ラクスルは、長い時間をかけてたくさんの産業を再編していくスタートアップ企業です。事業機会、成長機会は本当にたくさんあると思います。
優秀な経営陣をはじめ、多様なバックグラウンドを持った人材が、同じビジョンに向かってストレッチした環境で取り組んでいます。その環境の中で、数年でもチャレンジすることは、長いキャリアの中で絶対にプラスになっていくと思います。
僕自身、松本さんをはじめ、素晴らしい経営メンバーと一緒に働けたことが、とても大きな財産であり、自信になっています。ラクスルの経営陣は、事業をどう非連続に成長させていくかという“理性”と、人がどう感じるかという“感性”をバランスよく持っています。それは他にない魅力なのだと卒業して改めて感じています。
人生におけるキャリアの資産を増やすという意味では、ラクスルは必ず資産になる会社だと思います。ぜひ、成長の機会を楽しんでほしいですし、チャレンジ自体を楽しんでもらえたら嬉しいなと思います。