ラクスルで身につく課題設定力は、どんなキャリアにも生きていく
ラクスルを卒業したOB/OGたちは、ラクスルで何を学び、今にどう生かしているのでしょう。ラクスルの印刷事業部事業部長の経験を経て、現在は株式会社クロスビットにてCOOを務める河合晃誠さんに話を聞きました。
株式会社クロスビット COO
河合 晃誠
Akinobu Kawai
立命館大学政策科学部卒業後、株式会社じげんに新卒入社。事業部長として、マネジメントから戦略構築、トラフィック分析まで幅広く担当。2015年にラクスル株式会社に入社し、印刷事業部 事業部長として商品開発から価格戦略、オペレーション構築に取り組む。現在は、シフト管理サービス「らくしふ」、採用サービス「らくしふワーク」などを手掛ける株式会社クロスビットのCOOを務める。事業面全般から組織制度、バックオフィスまで幅広く担当している。
バリューチェーンの長い事業で経験を積みたかった
――ラクスルとの出会い、入社を決めた理由を教えてください。
ラクスルに入社したのは2015年でした。それまでは、新卒で入った株式会社じげんで事業部長を務めていました。医療系求人メディアや、引っ越しの見積もりサービスなどに携わっていました。
ラクスルへの入社を決めたのは、バリューチェーンが長い事業に面白さを感じたからです。当時は印刷事業しかありませんでしたが、ネットサービスでありながら、ものを仕入れて作る機能も持ち、長い工程で顧客価値に向き合えるのではないかと、興味をひかれました。
ほかに、経営陣がしっかりしている安心感もありましたね。永見世央さん(ラクスル取締役CFO)、田部正樹さん(ラクスル取締役CMO兼ノバセル代表取締役社長)がすでに入っており、福島広造さん(ラクスル取締役COO)の入社も決まっているタイミングでした。これだけ優秀な人材が集まっている企業で働きたい、という思いも決め手になりました。
――ラクスル在籍中の河合さんの役割について教えてください。
PL(損益計算書)を見ながら、当期の目標達成に加え、それ以降のグロースポイントを作っていくのが僕の役割でした。
入社はちょうどTVCMを打ったあとで、さらに事業を伸ばしていこうというタイミングでした。2年目にはプライシング(価格戦略)を任され、方向性を精査して作っていくことになりました。原価がある中、投資対効果を明確にした上で、どう値付けしてPLに反映させていくのか、納得感のある道筋を作るのに苦労しましたね。
――どんな点がもっとも大変でしたか。
利益率を担保しながら、お客様にとって価値あるプライシングを提供しなくてはならなかった点です。
当然ながら、値段を下げれば注文数は伸びますが、下げ過ぎると利益率だけでなく利益そのものが落ちてしまいます。だからこそ、トータルで利益を保ち、成長させるために値下げすべきポイントを的確に見定めなくてはいけませんでした。当時はデータ量が膨大だったにもかかわらず、データ分析システムの基盤がなかったため、エクセルで分析するしかありませんでした。どのような価格戦略をとるべきか、1週間エクセルを見続けて分析した時期もありました。その時は、「これならグロースするだろう」という勝ち筋を見つけるのに必死で、責任感に突き動かされていました。
――ラクスル入社理由にあった、バリューチェーンが長いからこその面白さはどんなところで感じましたか。
施策を打ったときに、全工程に影響が出るところです。大変に感じる一方、やりがいにもつながりました。
商品開発を手掛けた際は、新商品の提供を開始することによって、生産やカスタマーサポートのオペレーションがどのように変化するのか予見し、整理する必要がありました。きちんと状況を把握しておかなければ、現場の負担が増大してしまう。そこを事前のコミュニケーションによってクリアにし、目標達成に向けてみんなで動いていけたのは、ラクスルで得られた重要な経験だったと思っています。
「課題はどこか」という日常的な問いが、ラクスルの強さを作っている
――なぜラクスルを卒業し、クロスビットへの転職を決めたのでしょう。
アーリーフェーズの環境に身を置いて、自分の目線を上げたいと考えたからです。
ラクスルでは印刷事業部長として単一事業を見てきましたが、より組織全体を見られるゼロイチの環境でチャレンジしたいと思うようになりました。印刷事業部で売上率の高い数字を作ることができ、一連の役割は担えたかなと自信になったのも大きかったです。
――現在の業務内容を教えてください。
社員数約35人の組織で、COOを務めています。
会社は、シリーズAを終え、シリーズBに向けて動き出しているフェーズです。事業面全般を見ながら数字を作り、どんな組織を作っていくべきか採用戦略も含めて幅広く担当しています。
――ラクスルでもアーリーフェーズの組織を経験したかと思いますが、その経験はどう生きていますか。
組織が大きくなるにつれて発生する問題は、ラクスルでもクロスビットでも共通点があります。
評価への納得感、コミュニケーションの問題、入社した方のオンボーディングなどは、ラクスルが社員数100~300人へと増えていくプロセスでも顕在化していた問題でした。それらを予見しながら組織づくりを考えられるのは、1つの強みになっていると思います。
――ラクスルを卒業したからこそ見えてきた、ラクスルの魅力とは?
ラクスル社内では「課題設定」というワードが頻繁に出てきます。何らかの打ち手を打つ際には、課題をしっかりと特定することが前提条件になっています。社外に出ると、その考え方は当たり前ではなく、ラクスル特有の強みだったんだと気づきました。
今は採用戦略も考えているのですが、競争が激しくなかなか採用力が上がらない時期もありました。そんなとき、打ち手から考えようとすると「とにかくスカウトを送ろう」など目の前のアクションに飛びつきがちです。しかし、そのときの本当の課題は、入社に向けたストーリーが伝わっていない点にありました。ストーリー構築から取り組んだ結果で、それまで採れなかった層の採用につながるなど一定の成果を出すことができました。
ラクスルで「課題を正しくとらえているのか」という会話が日常的な問いとして発生していたからこそ、自分にも課題設定力が染みついているんだなと思いました。
――現在はラクスルとどのように関わっていますか。
卒業時に快く送り出していただいた経緯もあり、仕事でもプライベートでもいい関係が続いています。
仕事面では、一緒にオンラインセミナーをやらせていただいたり、人を紹介していただいたりしています。
クロスビットでタクシー広告を打ち出そうと決めたときには、ノバセルを含む3社でコンペを実施しました。クリエイティブのレベルの高さやメディアの在庫枠数などの点から、ノバセルに決めさせていただきました。フラットに判断しようとコンペを経たのですが、コストとクリエイティブのバランスを見ても圧倒的に良いと感じました。社外から見て改めて、顧客価値を考え抜いた設計になっていると感心しました。
プライベートでは、在籍メンバーのほかOBとのつながりも深く、フラットに仕事の相談ができるのもとてもありがたいです。助けていただくばかりではなく、こちらからもギブできるように意識しています。これからも、今と同じような関係を続けられればいいですね。
――最後に、在籍メンバーやラクスル入社検討中のメンバーへのメッセージをお願いします。
ラクスルには、会社全体で課題に向き合い、正しく解決していこうという意識が浸透しています。組織や人のしがらみがなく、事業の価値とは何か、顧客課題はどこかをとことん考え抜いているメンバーばかりです。それはとても珍しく、誇るべきカルチャーだと思っています。
ラクスルに染みつく課題設定の視点は、今後どんなキャリアを描く中でも活きていきます。ぜひ、ラクスルにいる間に課題を考えるクセを身に着けていってほしいと思います。