【ラクスル事業の裏側を解説!Vol.6】テクノロジーで業界の仕組みを変えた事例③ ~最適発注編~
ラクスル事業は「印刷のシェアリングプラットフォーム」を構築し、産業構造の変革に取り組みながら、“はたらく人をラクにするカスタマイズECプラットフォームをつくる”というミッションのもと、印刷・集客支援サービスを展開しています。
これまで、多重下請け構造や煩雑な校正入稿プロセスをはじめ、印刷会社とユーザーの2方面にかかわる課題を「仕組みを変える」ことで解決し続けてきました。
本連載では、ラクスル事業の運営の裏側で何を課題と捉え、“半自動化”をキーワードに効率化できるシステムをどのように開発・運用してきたのかを、事業・組織拡大の変遷とともに解説します。
また、今後さらに向き合いたい領域とあわせて、ラクスル事業ならではの働く魅力やチャンスに関しても取り上げていきます。
本記事では、事業躍進の裏にある、高度なIT技術を駆使して実現してきた印刷領域のさまざまな「仕組みを変えた事例」のなかから「最適発注」について紹介します。
「最適発注」とは、人力では不可能な「印刷の付け合わせ×発注」を自動で最適化する仕組みです。
ラクスル事業では、ユーザーに高品質な印刷物を圧倒的に低価格で提供するとともに、印刷の際に紙材を無駄なく効率的に使うため、依頼主や絵柄、大きさの異なる複数の印刷物をひとつにまとめて刷る「付け合わせ(ギャンギング)」という手法を採用しています。この付け合わせ工程を経て、それぞれの印刷データは、委託先の印刷会社ごとの稼働状況や得意領域を加味して振り分けられ、印刷・納品へと進みます。
最適発注の仕組みを開発した2020年以前は、付け合わせ工程と印刷会社への振り分け工程の全てを、人の手でおこなっていました。当時は、早朝から深夜まで担当者が交代制で張り付いて対応していたのです。この組み合わせは総計で8の400乗にもおよぶため、もっとも効率の良い方法を瞬時に弾き出すことは人力では不可能でした。
さらに、受注が右肩上がりに増加するなかで、担当者の勘に頼った付け合わせや振り分けを続けてしまうことにより、ラクスル事業全体のキャパシティの崩壊にもつながりかねない状況に置かれていました。以上の点に課題意識を持ち、機械学習の技術を用いて自動化したものが、最適発注です。
最適発注の開発・導入により、付け合わせ・振り分け工程の作業時間を大幅に短縮することができました。従来は人の手で丸一日を要していたのに対し、ボタンを一つ押すだけで、わずか10分間ほどで自動的に済ませられるようになったのです。労働集約的な作業時間の短縮により、キャパシティに余裕が生まれ、ラクスルの印刷基盤としてスケールメリットを生める状態を創出することができました。
また、受注数を増やしてプールを大きくすることが、より効率的な付け合わせの実現につながるため、作業時間を短縮しキャパシティが広がったことで、効率化の好循環をもたらせるようになったのです。
「仕組みを変えた事例①~③」で紹介した通り、ラクスル事業ではサービスのあらゆるフローのなかで効率化できる余地がないかを常に模索し、IT技術の力で仕組みを変えることに努めながら、成長してきました。
次回は、ラクスル事業が“はたらく人をラクにするカスタマイズECプラットフォームをつくる”というミッションを真に果たすために、今後取り組んでいきたい領域について説明していきます。
【連載一覧】
Vol.1 キーワードは“半自動化”。ラクスル事業のサービスはこんな風にできている!
Vol.2 プロダクト開発は、職種を越えた連携プレーで進行。その開発体制をご紹介!
Vol.3 ローンチから10年。ラクスル事業成長の軌跡をたどる!
Vol.4 テクノロジーで業界の仕組みを変えた事例① ~オンラインデザイン編~
Vol.5 テクノロジーで業界の仕組みを変えた事例②~スピードデータチェック編~
Vol.6 テクノロジーで業界の仕組みを変えた事例③ ~最適発注編~ ★
Vol.7 領域拡張、海外進出…ラクスル事業が今後目指す先とは? ←Next