3分でわかるM&Aでグループインした事業 ~ダンボールワン編~
はじまりは2020年。RAKSULとダンボールワンが、同じ北極星を目指して株式取得をしたことがきっかけでした。2022年に子会社化および経営体制の引き継ぎを実施した後、2023年8月より印刷のラクスル事業のダンボール/梱包材領域として完全統合。
“相思相愛”なM&AとPMIの成功を経て飛躍的な成長を続けるダンボールワンは、まだまだ変革余地の多い業界構造の「仕組みを変える」ことで、リーディングカンパニーとして市場の発展に寄与していきます。
Chapter1
梱包材EC国内シェアNo.1のダンボールワンが、業界の商慣習を変革!
「ダンボールワン」は、ダンボール・梱包材のECサイトを運営する事業です。
1978年に石川県金沢市で創業後、2005年より業界でいち早くEC化に取り組み、国内シェアNo.1を獲得。長きにわたり続いてきた商慣習による負の側面に対峙し、業界を変革する仕組みをつくってきました。
ダンボール/梱包材業界で長年続いていた「大ロットでオーダーメイド」の商習慣
従来のダンボール会社では、お客様の個別ニーズに沿って都度商品を作成する「オーダーメイド」が販売方式の大部分を占めていました。また、ダンボールは比較的単価が安く、かさばる大きさで、遠方に納品すると配送料が割高になってしまうことから、会社の所在エリア近辺での販売に限られていました。そのなかで採算が取れるように、多くのダンボール会社では、たとえば1,000枚以上のような大ロットでの注文を基本にしていたのです。
こうしたダンボール/梱包材業界の「大ロットでオーダーメイド」を主流とする商習慣は、実に100年以上もの間続いてきました。
たとえば1,000部で発注した場合、そのダンボールを平積みすると高さは約10メートルになります。3階建てビルの高さまで積み上がるほど、かさばってしまうのです。
「大ロットでオーダーメイド」の商習慣により、業界が抱えていた課題とは?
「大ロットでオーダーメイド」の商習慣でダンボール会社が抱えていた主な課題は、季節や生産量によっては稼働率が15~20%まで落ち込むなど、稼働の変動幅が大きいことでした。お客様が近隣の法人などに限定されていたために、工場では不規則な遊休時間が生まれてしまっていたのです。
「大ロットでオーダーメイド」の商習慣により、お客様が抱えていた課題とは?
お客様にとっては、「倉庫面積を犠牲にして、大ロットで発注」もしくは「非常に割高でも、小ロットで発注」のどちらかを選ばなくてはならない、悩ましい課題がありました。
本来、物販事業者をはじめとするお客様は、自社の倉庫をできるだけ商品在庫で埋めたいというニーズを持っています。やむを得ず大ロットで発注したダンボール/梱包資材が倉庫の場所を取ってしまうと、商品在庫を置くスペースが狭まってしまうわけです。一方、小ロットで発注すると、非常に割高な価格で購入せざるを得なくなるという状態でした。
これに加えて、オーダーメイドの特性上、発注から納品までの時間を要するため、たとえ急に必要になったとしてもすぐには手元に届かないという問題もあったのです。
課題解決のために、ダンボールワンが構築したEC化の仕組みとは?
規格品を販売するシステムを土台に、ネットを通じて「ダンボール/梱包材を購入したいお客様」と「提携する全国のダンボール会社」を最適にマッチングさせることで、お客様は安価で高品質なダンボール/梱包材を小ロットからすぐに手に入れることができ、ダンボール会社も稼働率・収益の安定化が進むという、Win-Winな取引を実現する仕組みです。
具体的には、ニーズを集約し300~400種類の規格サイズを設け、ダンボールの大量生産を実施しました。さまざまな材質・形状・サイズのダンボールと、梱包材やテープなどの関連商品を延べ約1,000種類ラインナップして、ダンボール/梱包材ECサイトで販売。そうして、種類豊富な規格品のなかから商品を受注し、在庫をスピーディーに納品できる状態を創出したのです。
Chapter2
M&AでRAKSULにグループイン。同じ北極星を目指し、飛躍的成長を実現
2020年の株式取得を経て、2022年に完全子会社化したダンボールワン。これまで培ってきた独自の強みは活かしつつ、RAKSULの知見とリソースを持ち込んで、飛躍的な成長を実現してきました。
RAKSULにグループインをするに至った、ダンボールワンの転機
「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを掲げ、伝統的な産業にテクノロジーの力を持ち込んで産業構造を変革するRAKSULに対して、ダンボールワンの前代表はRAKSULの創業時からベンチマークし続けてきました。
その後、ダンボールワンが、RAKSULグループ傘下の「ノバセル」でテレビCMの実施を検討したことをきっかけに、ラクスル事業の事業責任者との接点が生まれたのです。
そうして、フェーズの変化による課題を抱えていたダンボールワンが「今後さらに成長を加速していけるように」と、RAKSULの伴走のもと一緒に拡大していく決意をし、2020年には株式取得を、2022年にはM&Aを通じてグループインをするに至ったのです。
独自の強みを活かしつつ、「ラクスル方式」も効果的に導入。PMI成功の秘訣とは?
お客様のニーズを集約し、ダンボール/梱包材を規格化して販売するという、ダンボールワンがこれまで構築してきた独自の強みはそのまま活かしながら、RAKSULとタッグを組むことでさらに価値を洗練させることに注力。
RAKSULの社員が20名ほど出向し、コーポレート体制の盤石化、開発体制の高度化、オペレーション体制の再構築、事業開発における適切なKPI管理方法の導入、ノバセルからのアドバイスを通じたマーケティング力の向上など、必要なところに「RAKSUL方式」を組み込んだことで、全般的な体制強化を実現しました。
そうして、もともと300~400種類だったダンボールの取り扱い商品数を約6,000種類へ、また、梱包材やテープなどの関連商品を含めた全体商品数を約1,000種類だったところから約60,000種類へと、大幅に拡張したのです。生産性を高めながら、ニッチなニーズにも応えられる、より充実したダンボール/梱包材ECへと進化しました。
その結果、出資前(2020年7月期)は約33億円だった売上高が、グループイン後の直近決算(2023年7月期)では約75億円と、CAGR 30%超という急成長を遂げることができたのです。
Chapter3
ダンボール/梱包材ECの業界リーダーとして見据える、今後のさらなる仕組み変革
2023年8月に完全統合し、現在はRAKSULグループの祖業であり「印刷・集客支援のプラットフォーム」を提供するラクスル事業の一部門になったダンボールワン。ダンボール/梱包材EC国内シェアNo.1の企業として、業界の効率化と市場の発展に寄与すべく、いっそうの仕組み変革に取り組んでいます。
完全統合を経て、シナジー効果の創出が加速
RAKSULとダンボールワンの完全統合を経て、調達・倉庫・配送といったサプライチェーン共有の可能性や、お客様への相互紹介、組織における知見の増大など、シナジー効果がますます生まれています。
たとえば、テープやクッション封筒をはじめダンボールワンで取り扱う商品の一部は、海外で製造したものを調達し倉庫からお客様のもとに配送しています。ラクスル事業の別領域で今後同様に在庫を保有する際や配送の場面において、これらのサプライチェーンを共有すれば、事業運営上の小回りを利かせたり柔軟性を上げたりすることができるようになります。
また、双方の事業内容が隣接しており、ニーズの層も近しいことから、お客様に対してサービスを相互に紹介し合うことができています。ラクスルをご利用いただいているお客様には「ダンボール・梱包材の購入ならダンボールワン」、ダンボールワンをご利用いただいているお客様には「印刷ならラクスル」とメールやサイトで提案し、より便利に使っていただけるようにしているのです。今後は、さらにワンストップで提供できるサービスへと進化させていく予定です。
加えて、RAKSULグループには異なるフェーズの事業が複数あり、それぞれに異能多彩なプロフェッショナルが多数在籍しています。先を行くフェーズの事業責任者と互いの知見をすり合わせたり、切磋琢磨したりできる環境であるため、グループ内のシナジー効果創出も加速しているのです。
数々のシナジー効果のもとで成長を続けるなか、EC事業の需要を受けて国内のダンボール/梱包材市場全体は緩やかに伸長しており、ダンボールワンにも追い風が吹いています。
一方で、ダンボール市場におけるEC化率はわずか0.5%程度にとどまり、現状では梱包材市場を含め、ダンボールワンが構築した仕組みが業界全体に浸透するまでには到底及んでいません。ドラスティックな業界変革のためには、「バリューチェーンの各機能」「WEB上での商品最適提示」など、まだまだ変えるべき仕組みがいくつも存在するのです。
バリューチェーンが長いなかで、一つひとつの機能の仕組みを変えていく
ダンボールの場合、お客様の手元に届くまでの一連の流れは以下の通りです。
このなかで、ダンボールワンが既に仕組みを変えてきた工程もありますが、未着手の工程が多く残っていることも確かです。
さらに、最近ではダンボールのみならず、梱包材やテープなどの関連商品でもプライベートブランドの取り扱い数を増やしています。従来、ダンボール以外に関しては他社のものを買って再販する形を取っていましたが、自社で製造することで、より安価にお客様へ提供できるようにしていくためです。だからこそ、今後は並行して周辺領域におけるバリューチェーンの仕組み変革にもアプローチする必要が出てきます。
長いバリューチェーンの商材を複数取り扱い、その一つひとつの機能の仕組みを模索しながら変えることで、ダンボール/梱包材領域のありとあらゆるニーズに寄り添える、さらに便利なECサイトにしていきます。
高解像度と技術力を強みに「WEB上での商品最適提示」を実現していく
お客様は通常、ダンボール/梱包材を購入する際「自分が配送する物品を、ちょうど良いサイズ・形状のダンボールに入れたい」という動機で探し求めます。
オーダーメイドで注文する場合は、ダンボール会社の営業担当者と直接相談すれば最適なものがどれなのかが分かりますが、ECサイトを介してWEB上から自分で見つけ出す場面では、判断がなかなか難しくなってしまいます。せっかく「小ロットから低価格ですぐに手に入れられる」画期的な仕組みであっても、フィットする商品探しという余計なことに時間を取られてしまっては、お客様にとってマイナスを生みかねません。
ダンボールワンではこの課題に対峙し、業界・お客様への解像度の高さと技術力を強みに、WEB上でも個々のお客様にとって最適な商品がどれかを分かりやすく提示していくことの改善に努めています。
ラクスル事業が掲げるミッションのもと、領域・顧客拡張を通じて業界の効率化を牽引
ダンボールワンは今後も、ラクスル事業が掲げる“はたらく人をラクにするカスタマイズECプラットフォームをつくる”というミッションのもと、ダンボール/梱包材領域における多方面の課題に向き合い、既存のお客様には安定的に使い続けていただけるようにサービスを磨きつつ、紙袋・紙器など取り扱う梱包材の種類を増やし、潜在的なお客様にもアプローチしていくことを目指します。
領域拡張・顧客拡張を通じ、ラクスル事業の重要な一領域として、そして業界のリーディングカンパニーとして、中長期の時間軸でダンボール/梱包材業界全体のEC割合を引き上げていくことで、これからも業界の効率化と市場の発展に寄与してまいります。