今回お話をうかがった人

株式会社ペライチ 代表取締役社長 橋田一秀 さん(上記写真左)
株式会社ペライチ COO(株式会社ラクスル ラクスル 事業本部)安井一浩 さん(上記写真右)
2020年9月、ラクスルはホームページの制作を安価で提供するペライチに4.9億円の出資を行うことを発表。12月からはアカウント連携も始まり、「ラクスル 」のアカウントで「ペライチ」のサービスを利用できるようになりました。ペライチのサービスは、ホームページ制作の際にWEB予約や決済などの機能も簡単に導入でき、DXの推進が急務となっている今、急成長を遂げています。「『つくれる』のその先へ」というヴィジョンを掲げて2014年に創業された同社との連携によって、両社にはどのような相乗効果が期待されるのでしょうか。ペライチ代表取締役社長・橋田一秀さんと、9月よりラクスルから同社にCOOとして出向している安井一浩さんに、“2社で実現する未来”について話を伺いました。
——まずはペライチ立ち上げの経緯から、改めて教えてください。
●橋田さん 「ペライチを立ち上げたのは、まだ前職でエンジニアをしていた2012〜2013年当時、『スマートフォンでも見やすいホームページの需要が高まっているのではないか』と感じたことがきっかけでした。スマートフォンの普及率が急激に高まったことで、『ホームページ=パソコンで見るもの』という概念が変わり始めていた頃です。当然、その頃のホームページの多くはパソコンの画面で見ることを前提とされていたので、画面サイズが大きい上に要素も多くて、メニューごとに分かれているページをいかに整理するか、ということに注力されたものでした。しかし、そのホームページをスマートフォンで見るとなると、何度もスクロールしなければならないし、通信速度も今ほど速くはなかった時代ですから、ほかのページに移るたびに時間もかかっていた。そんなことでは、大事な顧客が途中で離れてしまいますよね。そこで、まずは簡潔に、『伝えたいことを一枚のページにまとめる』ということをコンセプトにして、スマートフォンで表示させる際にもページの整地が必要のないものを提供していこうと考えたのです。
その背景には、たまたま僕の周囲で新たな事業を立ち上げようとしている人がたくさんいて、リアルな悩みを見聞きできたという実体験があります。新たなものを紹介する際に、いきなり膨大な内容を提示しても伝わらない。なるべくシンプルに、かつ注目を集められるようなものにしなければ、“集客”や“認知度アップ”、“売り上げ向上”といったホームページを立ち上げた先の“目的”を達成することは難しいと感じていたのです」
——ペライチは、どんな会社なのでしょうか? 橋田さん、外(ラクスル)から出向されている安井さん、それぞれの視点から教えてください。
●橋田さん 「創業から6年半が経ち、現在は正社員が20名程度、ほかの業務形態のメンバーも含めると30名程度の組織になりました。新型コロナウイルスの影響で直接集まる機会は減ってしまっていますが、もともとは割とウェットな組織で、コミュニケーションも活発です。例えば毎週水曜日はランチ会をしていて、みんなで一緒にご飯を食べる時間も作っていました。ランチ会がスタートした当時は、おかずまで社内で作っていたんですが、さすがに人数も増えてきたので、コロナ前まではご飯だけ社内で炊いて、おかずは用意してもらうようになりました。 ほかにも、さまざまな部活動を有志で行っています。『エナジードリンク部』とか『レトルトカレー部』とか、基本、どれも飲み比べ・食べ比べなんですけどね(笑)。最近は、オンラインで週1回15分、みんなでパソコンの前で体操をする、という取り組みも始めました」

●安井さん 「僕から見たペライチは、総論で言うと“優しい会社”です。ラクスルはどちらかというとバリバリのビジネスマン集団で、数字に重きを置いている印象ですが、ペライチはどちらかと言えば人を大事にしている。その反面、ビジネスや数字に関しては、二番目という感じですね。それは決して数字に甘いということではなく、売り上げどうこうというよりも、サービスやユーザーに重きを置いているメンバーが多い、ということです。今のペライチって、ちょうど僕が入社した頃(2014年)のラクスルと同じくらいの規模感なんですよ。なので、まだ仕事を選んでいるようなフェーズではない、ということもあるのかもしれませんが、そのスタンスは好きですね」
●橋田さん 「立ち上げ当初の人員構成が、9割エンジニア、もしくはデザイナーだったんです。僕自身もエンジニアでしたし、良くも悪くも作り手としてユーザーにどう対峙していくかを重要視してきました。それが今でも会社のカルチャーになっている、という部分はあるかもしれません」
——ペライチの強みは、なんだと思いますか?
●橋田さん 「プロダクト面においては、シンプルに速く公開する、ということを創業当初からやり続けています。ずっと掲げている『「つくれる」のその先へ』というヴィジョンは、WEBサイトって、作ったら終わりではなく、作ったその先にそれぞれのゴールがあって、その実現に貢献していきたいという思いを込めたものです。 “(WEBサイトを)作れる”の部分をより簡単に、より機能的にして、その先のカスタマーサクセスの部分で成果を出すことにこだわってきた、という点は強みになるのではないかと」
●安井さん 「ラクスルとの比較で言えば、ユーザーとの距離はペライチのほうが近いのではないかと思います。サポーター制度というのを設けていまして、ペライチを使いこなしているユーザーさんが、ほかのユーザーさんに教えるというもので、そのセミナーを仕事の一つにすることもできる、というものです。こちらが想定していなかったような使い方・活用法なども出てきたりしますし、そういう制度があるとユーザーもペライチのメンバーになった感覚で利用できるのかなと」
——ペライチとの提携をラクスルが決めた理由はなんだったのでしょうか?

●安井さん 「大きく2点あります。1点目は『ビジョンが近い』ということです。ラクスルの『仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる』というビジョンに対して、ペライチもサービスを通して世の中を変える、ということを軸にしているんですよね。かつ、そのサービスのターゲットが主に中小企業という点においても、目指している方向性は近いのではないかと思います。もう1点は、事業的な理由で、『補完関係を築ける』ということです。例えばラクスルは、ECで購入してもらって、印刷をしたら終わりですが、その後ユーザーさんが、新規事業を立ち上げるとする。その時もしも、ペライチのサービスで在庫管理や予約、決済などを含めたWEBサイトの立ち上げをサポートできたら、より深くそのユーザーさんに貢献できるのではないでしょうか。 まずは、連携してスムーズに両サイトにログインできるようにするところから始めて、ペライチ上にあるデータを利用してラクスルで印刷する、といったところから進めていきたいなと考えています」
——ペライチとして、ラクスルとの提携を決めた理由はなんでしょうか?
●橋田さん 「まずひとつは、連携してペライチとラクスルの利用が容易になればユーザーさんへの認知度が拡大するだろうと考えたことです。ユーザーさんからすると、ラクスルもペライチも、チラシを作って認知してもらう、ホームページで購買率を上げる、という点で、広義でマーケティング手段、プロモーションの手段のひとつであることに変わりはないんですよね。なので、プロダクト上でのインテグレーションや顧客管理の部分も共有していけたらと考えています。 もうひとつは、組織面や、事業のグロース面で、ラクスルのこれまで辿ってきた道筋には一定の再現性があるのではないか、という期待もあります。実際に、ラクスルがお客さんから指摘されていたこと、例えばデザインテンプレートの少なさなどは、今、ペライチがお客さんに指摘されていることだったりするんです。自分が必要としているものが見つけられなければそこで離脱してしまうユーザーさんも出てくる。そういう5、6年前にラクスルが乗り越えてきたことを今我々が急ピッチで改善していくことで、成長スピードを加速させられたなと思います」
——橋田さんから見て、安井さんが参画されたことですでに変化はありましたか?

●橋田さん 「まだペライチに来ていただいてから日は浅いのですが、とても大きな変化が起きていると感じます。資金調達の段階から入っていただいていて、その資金をどう使っていくか、それに伴って組織をどう動かしていくのか、今後の方向性をこれまで自分たちにはなかった視点からいろいろとアドバイスしてもらっています。おそらく今、一番オフィスに来ているのも安井さんじゃないかな、と。役員陣だけでなく、現場のメンバーとも積極的にコミュニケーションを取ってくださっていて、現状を確認しながらどう進めていくべきか、どう変えていくべきかを、毎日Zoomで会話しながらすり合わせる作業をしています」
——安井さんは、今後ラクスルでの知見をどのようにペライチで活かし、また、どんな挑戦をしたいと考えていらっしゃいますか?
●安井さん 「ラクスルでは、マーケティングをはじめ、折込・ポスティングやデザインも担当していたことがあるので、各事業をどう伸ばすかという経験があります。その経験はペライチでも活かして、同様に伸ばしていきたいですね。ラクスルでも専門家というわけではなく、幅広くいろんなことをやってきたので、ペライチが世の中に認められるために、いろんなことに挑戦したいという思いが強いです。 個人としては、取締役になったので、財務面や組織面についてもいろいろとトライしていきたいなと思っています。攻めと守りがあるとすれば、これまでは攻めが中心だった。なので、今後は守りの部分も磨いていきたいです」
——最後に、今回の提携を機に成長を遂げた先で、ペライチが目指す世界観を教えてください。
●橋田さん 「最近は、『「つくれる」のその先へ』というヴィジョンをブレイクダウンして考えるようにしています。キーワードを言うならば、『マーケティングの民主化』。我々がメインターゲットとしている中小企業や個人事業主の方って、『マーケティング』というものをあまり強く意識していないんですよね。『集客をどうしようか』とは考えるけど、それがマーケティングやプロモーションにはつながらない。ただ、やっていることは広義でのマーケティングですから、そこを民主化していきたいんです。そのために、ホームページをつくることも含めて、これまで『ハードルが高い』と思われていたものを下げていきたいんです。ペライチやラクスルを通して、結果的にマーケティングをやっていたよね、という体験をたくさんの方にしてもらえるようなる、そんな世界観を目指していきたいですね」
Related Stories
関連するストーリー