
ノバセル事業本部/プロダクト開発部
笹子 圭太
--笹子さんは2020年5月に入社されたそうですが、これまでの経歴とラクスル に入社した理由を教えてください
ヤフーで検索関連サービスの開発本部長、Kaizen Platformで広告事業立ち上げのPdM、他にもヘルスケアのスタートアップでCTOやPdMを経てラクスル に入社しました。10名未満のスタートアップで働くことが多かったのですが、当時は通常の業務に加えて採用関連のコミュニケーションにかなり時間を取られていました。いま2歳になる娘がいるのですが、当時から子どもが生まれてからもっと仕事と家庭のバランスを取る必要性を感じていました。
ラクスル は入社前にチームメンバー数名とお話しさせてもらったところ、他にも子育て中の方がチームにいて、自分が求める働き方に理解を得やすい雰囲気を感じました。やはり自分の実績や能力をいかせることはもちろん、企業カルチャーが肌に合うことも大切な要素ですから。
入社後、現在はノバセル事業本部のプロダクト開発部でPdMをやっています。ノバセルでは、これまで定量評価が難しかったテレビCMの効果分析サービスを手がけているのですが、このなかで新領域の開発を担当しています。
--育児休暇はいつごろ、どれくらいの期間で取りましたか?
2021年2月から3月末までの2か月間です。休暇期間はお母さんと赤ちゃんが外出可能になるまでの1か月と考えていましたが、新年度の4月復帰のほうが区切りがいいと思って2か月に決めたんです。
でも振り返ってみると4月は保育園も新入生を迎えたばかりで慌ただしく、保育時間の調整や子どもの体調確認で急なお迎えが頻発しました。それが落ち着いた5月の復帰にすればもっと楽だったかな、と思います。もしこの時期に取得する人がいたらぜひ参考にしてほしいですね。

--取得を決めたいきさつを教えてください
1人目が生まれたときはちょうど転職のタイミングだったので、産前産後の状況が落ち着いてからに入社時期を合わせました。今回は上の子の育児をしながら仕事をして、さらに2人目が加わったらもう生活が回らないと思いました。コロナ禍で身内も気軽に頼れませんし、新生児に加えて、2歳の長女もいる状況だったので迷わず育児休暇を取得することにしました。
あとは妻の影響もありますね。彼女の会社は育児休暇を取得する男性が多いようで「あなたも当然取るよね?」という空気がありました(笑)。
--チームはどのように育児休暇をサポートしてくれましたか?
妊娠中、妻の悪阻がひどく外出もままならなかったので、夏ごろから長女面倒はほぼ自分が見なければならない状況だったのもあり、業務時間を調整してもらっていたんです。保育園の送迎がしやすいよう早めに仕事を始めて、夕方も早めに上がっていました。そんな事情もあって、育児休暇の取得もチームにはすんなり受け止めてもらえたように思います。
業務の引き継ぎは、契約関連の重要な業務を別のPdMへ、ディレクションやユーザーインタビューは、デザイナーやビジネスのメンバーに分担してもらいました。もちろん重い業務を担当していたので申し訳ない気持ちはありましたが、もう割り切って「お願いします!」と甘えん坊精神でいきました。会社の業務って自分以外でもできることがほとんどだし、チーム運営も「なるべく属人化をなくそう」という方針になっているので、それも奏功したのかもしれません。

--業務面以外で、育児休暇を取る上でハードルだと感じたことがあったら教えてください
特になかったですね。収入面は雇用保険から給付金が出るのであまり問題ないと思いますし、社内的な手続きもすべてSlackで完結したのでスムーズでした。人によっては、住宅ローンの返済が心配だったりはあるかもしれません。その場合、は前もって貯金なり準備が必要とおもいます。生活面はコロナ禍でお金を使わなくなったので出費が減りました。
経済面から見ると、多くの男性にとっては、キャリア形成に対する不安がハードルなのかもしれません。僕はこれまで何回かの転職でキャリアのレールを乗り換えてきたので、そこは全然気になりませんでした。一方で、キャリアへの不安はずっと女性が背負うことが多かったのも事実だし、これからもそれでいいのかは考えてみてほしいと思います。
--育児休暇中はどのように過ごしていましたか?
2月に次女が誕生し、しばらくは2〜3時間おきの授乳が続くので次女の育児で一杯一杯な妻のかわりに長女の育児と家事全般を担当しました。長女は2歳のイヤイヤ期※の真っ最中、保育園の送り迎え、食材の買出し、食事の介助、歯磨き、お風呂、寝かしつけ、掃除、土日の遊び、でほぼ100%の力を使っていたと思います。
会社で新しく仲間が増えるときにオンボーディングを実施すると思いますが、。育児の場合、家庭で24時間休みなくなオンボーディングしているような状況になります。。
我が家は、疲れ切ってしまったとき、予定が詰まって家事が回らないとき等、ベビーシッターさんを積極的に活用してます。
※2歳前後の子どもが自我の芽生えとともに「イヤ!」「ダメ!」など強く自己主張する時期のこと。時に暴れたり激しい癇癪を伴う。

--そんな休暇期間、何か楽しかったことや気づきがあったら教えてください。
休暇前は仕事もあったため親のタイムスケジュール中心に行動しがちでしたが、休暇中は少しゆとりができたので子どもを中心に行動してみたところ、社会が広がっていったのが印象的でした。保育園の先生や園児に顔を覚えてもらったり、時間を気にせず子どもの道草に付き合ったことで、近所で散歩している方や小学校に通学している子供に挨拶するようになったり、地域のゆるい関係性が広がりました。。
この経験を通して、大人が子供に対して、リーダーシップ、フォロワーシップ の使い分けが大切と感じました。振返ると、自分の経験、育児に関するインプットから子供に対してリーダーシップが多めだったなと。育休の経験を通して、フォロワーシップを意識して、子どもが考えたり理解しようとしている時間を大切にすると、子供の個性みたいなものが見えるようになってきました。
--現在は復職して約2か月(※注:取材時)経過しましたが、働き方や家庭生活で意識していることはありますか?
キャッチアップを丁寧に進めて、不在の間に進行したことに対して議論の前提を崩さないことを大切にしています。復帰と言っても家事育児にかかるパワーが増える中で、仕事に掛けられるパワーの残量が減っているのは明らかです。休暇前のパフォーマンスを完全に再現するのは難しいため、困ったことがあればチームと働き方を調整しながら、この差異をどうやって埋めていくか試行錯誤しています。
家庭では小さなことで揉めることもありました。「これはどっちがやる」とか些細なことなんですが、お互いに余力がないんですよね。うちは夫婦ともに溜め込まない性格なので、ひとつずつ話し合って解決しています。
あとは自宅で仕事をしているので、業務を終えたらメールやメッセージは見ないように翌朝に回すなど、仕事と家事育児の時間を切り替える意思を大切にしています。

--育児休暇を通じて得られた気づきはありますか?
「終身雇用で育児は女性がする」という前提での右肩上がりのキャリアデザインに、息苦しさを感じますね。それに合わせられないと能力不足と評価されたり、家庭の都合で仕事を休むと復活が難しくなるような空気では、少子高齢化が進む中で、子育て世代が生きにくい社会になっちゃうなと考えています。。現役子育て世代より上の旧子育て世代が作った仕組みは、社会の状況も異り考え方の前提条件が大きくズレています。現役子育て世代に合わせた仕組みが必要とおもいます。
知り合いで「会社のポジションはドラマの配役と同じだよ」と言った人がいます。その時々で一番情熱のある人が大きな責任を持てばいいし、仕事と家庭のバランスを取りたいときは脇役で協力者になればいい。配役はライフステージに合わせて変化すればいいですよね。これからの時代は、多様な選択を可能にする社会制度や会社制度のほうが心地いいのかなと感じます。
--日本の男性の育児休暇取得を今後さらに普及させるために、笹子さんならどのように仕組みを変えますか?
単純に取得率を上げるなら、会社員は義務化すればいいと思います。課題はいろいろありますが、取得する、しないを悩ませる、業務面や収入面の課題から個人を分離できるとおもいます。
一方で、育休が本質的に機能するかについて、育休中に夫婦が果たす役割について期待値合わせが必要ですね。これまで夫婦で家事を分担してきた人は話し合えばいいのですが、夫婦のどちらかが、家事にノータッチの場合、育休取得してもゴルフの練習時間になったり、趣味の時間に費やして育休の目的を果たさない可能性があるのではないでしょうか。。こういう課題に対しては、ソフトウェアの開発のスクラムマスター的役割の第三者が必要ではないでしょうか。経験豊富な第三者、できれば似たような仕事の経験をして育休取得した方が対象の夫婦に子育てコーチとして介入して、夫婦でやるべきこと整理したり、能力が足りない部分は教育してあげるくらいが必要ではないでしょうか。

--最後に、これから育児休暇を検討している方に向けてアドバイスをお願いします!
周囲の迷惑を考えすぎるとキリがないので、「育児休暇とはそういうもんだ」という割り切りが必要です。また特に男性の方にお伝えしたいのは、会社生活よりも家族との生活のほうがこの先ずっと長いということ。特に新しい家族が増えるときには一時的に家族を優先したほうが、その先長く続く家族との信頼関係も強くなります。
今だけだと思うんですが、「育児休暇を取っている」って言うと、周囲から手放しでリスペクトされるんですよ。これは意外な発見でした。保育園の先生や他のお母さんたちからは「育休を取得されてて素晴らしいですね!」と褒められるし、行きつけの歯医者さんでも「私の時代は一人で全部やって辛かった。いい時代になってきたわ。」と毎度褒められます。仕事以外の場でもこんなに自分の価値があったんだと気づけて、ものすごい自己肯定感に浸れます(笑)。いろんなことが体験できる人生でも期間限定のタイミングなので、ぜひ逃すことなく取ってみてほしいなと思います。
一方で、この文章を読むと女性の方はムッとするはずです。「育休取得しますよね」が社会の前提となってしまっているし、家族や周りの人達から改めて感謝をされたり褒められたりすることなんてないわ!という方が多いのではないでしょうか。
今後男性の育休取得が増えてそれが多数派になってくれば、逆に「育休とらなくていいの?」と声をかけられる社会になってくると思いますし、是非そうなるべきであると私は思います。ただ、そのためには僕たち男性の積極的な行動変容が必要です。育休取得を悩んでいる方は、その大きな社会的チャレンジの一端を担っているんだという思いを持って迷わずに育休取得していただけたらなと思っています。
ラクスルの福利厚生
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