
事業管理のプロフェッショナルとして、更なる進化を目指して——大手商社からの転職で、より“責任ある立場”から事業にコミットする
ラクスル事業本部 VPofFinance
野 真理子
▼経歴
1984年生まれ。早稲田大学卒業後、住友商事にてIT事業営業、経理部を経て、CVC部隊のミドルオフィスとして管理会計、事業会社立ち上げに従事。元Stanford大学Shorenstein APARC客員研究員。現在、ラクスルのVPofFinance(事業管理部長)として管理会計、ポートフォリオマネジメントの仕組み作り、運用を担当。
▼ラクスルに転職を決めた2つの理由
(1)自分の考えやポテンシャルを引き出してくれる人たちであり、自分にない視点を持っている人たちが、ラクスルにはいると感じたから。
(2)広い責任範囲のなかで、より高い視座で物事を考えて事業を運用してみたいと感じたから。
——ラクスルに入社されるまでの経歴について、改めて教えてください。
「私は新卒で住友商事に入社し、IT事業部で営業を4年間経験しました。担当していたのは、社内のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が出資していたアメリカのベンチャー企業の製品の販売代理店業でした。日本でその製品を展開するにあたり、マーケティングやブランディング、営業、販売パートナー開発などあらゆることを経験させてもらいました。もともと『海外勤務もして、バリバリ一線で働くぞ!』という気持ちで入社したので、さまざまなスキルを身につけないと、と必死で頑張っていたと思います。
入社4年目の頃、担当していた事業を子会社へ事業移管するタイミングで、バックオフィスへの異動を希望しました。経理部への異動が決まってからは、新入社員の皆さんとともにイチから研修を受けて、再スタートでしたね」
——ようやくひとりでひと通りの仕事ができるようになったタイミングで、また新たなスキルをゼロから習得するのは大変ではなかったですか?
「営業部時代にも簡単な契約書や事業計画書などは自分で作っていたんです。その中で契約書のレビューや予算策定等、バックオフィスのスキルも求められることが多く、今後も商社でキャリアを積んでいくには営業以外の特殊スキルをもった方が良さそう!という思いもあっての異動だったので、ポジティブな気持ちで経理部に行きました。
経理部に2年所属したあとは、IT関連事業部隊やCVC部隊のミドルオフィスとして管理会計や事業管理を担当。事業会社の立ち上げやM&A検討にも携わりました。商社という数字に強い人たちの中でも、より詳細な会計や数字の意味を理解しながら、営業の感覚も持ち合わせて業務の方向性を決めるというのは、意外とレアスキルだと感じました。
もともと、事業の意思決定は複雑性と不可実性に満ちていて、かつ、なかなかそれぞれを定量的に評価するのが難しいなと感じ、その曖昧さの中での『やる/やらない』のやり取りに苦手意識がありました。一方で、事業にかかわる数字には実績というゆるぎない正解があり、答えも出る明解さもあると同時に、予算や業績には事業主の意志と想いがこもっています。この事業主の想いを正しく受け取り、どのようにマネジメントし、達成に向けてどのように伴走していくのかを突き詰めていく『事業管理』という仕事は、自分の志向に合っているなと気づきました。
こうして、前職でも志向に合うポジションで働くことができていました。正直なところ、待遇にも環境にも満足していましたし、居心地が良かったからこそ、15年間勤めてきたんです」
——不満がなかったにもかかわらず、転職に踏み切った理由はなんだったのでしょうか?ラクスルに入社した決め手も教えてください。
「そもそも会社をやめるという考えもなく、『自分の市場価値の定点観測』という動機からビズリーチに登録していました。そうしたら、とあるベンチャーから好条件を提示され、CFO候補というポジションで採用通知までもらってしまいました。そこで初めて、『転職』という選択肢があることに気づきました。ひと足先に、ラクスルに転職した先輩がいたので、ベンチャーへの転職のきっかけを聞きつつ、オファーされた会社について相談しようと連絡を取ったところ、『ちょうどいいポジションがあるから、どうせ検討するならラクスルも一緒に考えてみて』とお誘いを受けたんです。
先輩がそう言うならと、試しに採用担当者と面談し、ワークサンプルテストを受けたら、すごくフィットする感覚がありました。ワークサンプルテストで具体をもって話し合った際に、自分の考えやポテンシャルを引き出してくれる人たちであり、自分にない視点を持っている人たちだとも感じました。完全分離型で自分のテリトリーに専念していれば事業と数字がパズルのように組み上がっていく大企業とは違い、自分の責任範囲のピースが大きいベンチャー企業では学ぶことも視点も異なります。そこに可能性を感じたこともラクスルを選んだ大きな理由です」
——ただ、大手商社からベンチャー企業への転職となると、待遇が“下がる”のでは、という不安はなかったですか?
「おっしゃる通りで、住友商事時代のポジションのまま転職しようと思うと給与等の条件は下がりますし、維持したまま転職しようと思うと一気に責任が大きくなるんですよね。しかし、37歳という今のタイミングで出なければ、このまま定年まで勤めることになりそうだと感じました。そうなった場合、大手商社で、女性である自分が管理職になり『決定権』を持てるポジションがまわってくるのか、というところにも疑問がありました。もちろん素晴らしい環境や条件で働けなくなるという怖さはあるものの、事業と向き合って戦力を高め、実力を試しつつ、今よりも高い視座で物事を考えたいという思いも強かったんです。そういった面でも、ラクスルの環境との相性も良かったと思います」
——今はVPofFinance(事業管理部長)という肩書ですが、どのようなお仕事をされているのですか。
「ラクスル事業において、事業が目指すシェイプを長期かつ俯瞰的視点から設計・ガイド・評価・改善する、ポートフォリオマネジメントをしています。
事業の目指す姿・あるべき姿を設計し、どういった着地を目指すのか提示するのが、私の役目だと思います。あまり事業そのものにフォーカスしすぎると“事業の人”になってしまうので気を付けています。一緒に足元ばかりを見てしまっては、事業の自立性にも影響しますし、全体バランスとしての管理がおぼつかなくなってしまいます。そのため、あくまで目標地点の管理をすることに重点を置いて、働いていますね。
また、コーポレートと事業の間に立って、事業に直接関連しない調整ごとを担当するのも大事な仕事のひとつです。事業の人たちが事業に集中するために、ほかのことは一手に引き受けるというのが事業管理のあるべき姿だと思っています。」
——今後、ラクスルで実現したいこと、チャレンジしていきたいことを教えてください。
「管理事業は経験と積み重ねが資産です。事業の癖を知り、実際に経験して、仮説と検証を繰り返すことでしか発展しないと思っています。だからこそ、ラクスルという事業をよく見て、知って、よく数字を回していきたいです。入社数か月の現時点ではまだ、スタート位置にすら立てていない状況ですから。
そのため、まずはスタート位置に立てるくらいの経験則をなるべく早く得たいと思っています。地味であるべき地味な仕事を、確実にコツコツ積み重ね、事業を行う皆さんに安心して背中を預けてもらえる事業管理屋になることが直近の目標です」
——野さんのように、大手商社からベンチャーに転職を考えている人たちに伝えたいことはありますか?
「会社や置かれた環境に不満があって、“ただ出たい”という気持ちで転職するのはやめたほうがいいと思います。環境、人材、学べるサンプルが整っているのが商社。目的意識がなく出ると、想定しない方向に物事が進んでしまう可能性があるからです。
一方で、商社ではできないこともいっぱいあるので、『自分で決める』『早いうちからマネジメントする』『事業にコミットする』ことに挑戦したいなら、ベンチャーはおすすめします。
私もそうでしたが、『自信がない』と『挑戦してみたい』は表裏一体なんだと思います。事業そのものにコミットして向き合うポテンシャルは、商社に勤めてきた人ならみんな持っているはずです。なかなか専門性をレジュメに表現しにくいキャリアになりがちな商社ですが、どんな業務や環境にもすぐに適応してやり切る力は商社パーソンならではの強みです。商社で基礎固めしたことの価値は一歩外に出てみてこそわかると思いますし、挑戦できる一定のスキルセットだって持っているのですから。なので、試してみたいことがあるなら、新たなフィールドでも活躍できますよ!」